【背景】上腕動脈や橈骨動脈からアプローチする心臓カテーテル検査において, 従来は簡易的に自作した固定具を用いていたが,この方法では上肢を安定して保持することが難しいことから,時には検査に支障をきたす場合もあった.また, 最近は遠位橈骨動脈からアプローチする場合もあることから,これまで以上に手や指の角度を安定して保持することの重要性が増した.【目的】心臓カテーテル検査において,手や指の角度まで安定して保持できる,上肢穿刺用の固定具を考案して実用化する.【新固定具の開発ポイント】①U 字管に沿わせるように上肢を置くことで,上肢の内外転の動きを最小化できた.②手掌は常にボールを握るようなアイデアを採用した.このボール部分は両端に磁石を付けたビニールチューブで押さえて固定する構造とした.また,磁石が吸着するようにU 字管の裏面に鉄板を付加した.③手関節とU 字管の間に角度を付けたスタイロフォームを挟むことで, 橈骨動脈からの穿刺時には背屈位,遠位橈骨動脈の穿刺時には尺屈位を保持できるようにした.④不要になった防護衣の一部を固定具の側面に取り付けて,術者の散乱線被曝の減少に努めた.【評価方法】心臓カテーテル検査に従事する診療放射線技師12 名を対象に, 従来の方法と今回作成した新固定具に関してアンケートを実施した.アンケートの内容は,①内外転の有無, ②内外旋の有無,③使用時の不快感, ④固定具の取り付け易さ,合計4項目について5 段階で評価した.さらに,臨床における使用感を術者から聞き取りを実施した.【結果】アンケートの結果 , 上記の①~③の設問については,新固定具の評価が高かった. ④については,従来とほぼ同様の手間で取り付けられるという結果であった.術者からの聞き取り結果は,「橈骨動脈から穿刺をした時にはしっかり背屈できており安定していた.」,「腕の内外転のズレもなかった.」,「遠位橈骨動脈からの穿刺時は, しっかり尺屈できている肢位がとれたのが良かった.」,「指を開いている事でワーキングスペースが確保できた.」などの好意的な感想が多かった.【考察】新固定具の評価が高かったのは,U 字管に沿わすように上肢全体を固定できるため,問題となる動きを抑制できたことが,これまでにない点として評価されたと考える.また,固定具の脱着に関する作業に関する改善はなかったが,従来法よりも確実に穿刺に適した肢位を保持できる点が,術者の高評価につながったと考える.【結語】上肢からアプローチする心臓カテーテル検査において,手や指の角度まで安定して保持することのできる固定具を臨床現場に提供して高い評価を得ることができた.
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