天理医学紀要
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令和2年度受賞
末梢血multicolor flow cytometry と血漿cell-free DNA のRHOAG17V/IDH2R172 変異解析を組み合わせた血管免疫芽球性T 細胞リンパ腫のliquid biopsy 診断
林田 雅彦前川 ふみよ小橋 陽一郎大野 仁嗣
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2021 年 24 巻 1 号 p. 68-69

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抄録

末梢血を用いた血管免疫芽球性T 細胞リンパ腫(AITL) の診断法を報告する.【材料と方法】リンパ節生検でAITL または類似の病理形態を示した20 例の末梢血から調整した白血球・単核球と,EDTA 血漿cell-free DNA (cfDNA) を用いた.リンパ腫細胞の検出と定量のために,2 種類の抗体パネルを用いた2 ステップの10 色 multicolor flow cytometry (M-FCM)を構築した.CD3 陽性例はTCRVβレパトア解析でクロナリティを判定した.RHOAG17V/ IDH2R172 変異はAS-PCR で検出した.【結果】全例でリンパ腫細胞を検出した.11 例でCD3dim,7 例でCD3,3 例でCD4dim,3 例でCD5++,7 例でCD7dim/–.リンパ腫細胞のCD10 陽性率は0–100%(中央値15.7%).10 例で TCRVβレパトアのクロナリティを認めた.これらの形質はリンパ節の結果と概ね一致した.末梢血白血球に占めるリンパ腫細胞は0.01–18.22%(同0.26%),絶対数は0.5–1491.6 個/μL(同29.3 個).RHOA 変異は14 例(70%), IDH2変異は3 例(15%)(RHOA変異と重複)で認め,これらの結果はリンパ節,末梢血,骨髄,腹水などと一 致した.【考案】AITL では末梢血中にリンパ腫細胞が高頻度に認められる.一方,cfDNA はAS-PCR のテンプレートとして使用可能である.従って,末梢血M-FCM とcfDNA のRHOA/IDH2 変異解析を組み合わせたliquid biopsy はAITL の迅速・非侵襲的診断法である.

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