【背景】ステロイド長期使用患者では手術部位感染症(surgical site infection; SSI)の発生率が高いことはよく知られているが,緊急手術を対象とした検討は少ない.本研究では腹部緊急手術における長期ステロイド使用患者のSSI発生の実態を調査した. 【方法】単施設過去起点コホート研究を行った.消化器外科で緊急手術となった患者のうち,過去5年間におけるステロイド使用群と過去1年間におけるステロイド非使用群でのSSI発生率を比較検討した. 【結果】ステロイド使用群は35人,非ステロイド使用群は227人が解析対象となった. SSIはステロイド使用群の6人(17.1%),非ステロイド使用群の14人(6.2%)に生じ,有意差を認めた(P = 0.035).またステロイド使用群でSSIをきたした6例のうち4例は消化管穿孔を伴っていた. 【結論】腹部緊急手術ではステロイド使用群においてSSI発生率が有意に高かった.