日本転倒予防学会誌
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総説
認知症のある高齢者の転倒予防
征矢野 あや子
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2014 年 1 巻 1 号 p. 17-21

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抄録

 高齢化に伴い認知症を有する高齢者が増加の一途をたどり,認知症高齢者の転倒は深刻な健康課題である。認知症高齢者は認知症を持たない高齢者よりも転倒しやすい。その要因として,脳の病変により運動機能が障害される,認知症の行動・心理症状(BPSD)から転倒を誘発する行動をとる,状況の理解や適切な判断ができないため安全を優先した行動がとれなくなる,薬剤の副作用などがある。このような易転倒性を抱えた認知症高齢者を対象とする転倒予防は,従来の医学モデルに基づく対策では功を奏さないことがあり,急性期の医療施設であっても介護福祉の視点を要する。認知症高齢者の転倒予防にあたっては,①繰り返しの説得や活動の制限よりも,認知症高齢者のニーズをさぐり,満たすことで転倒を誘発するBPSDを予防する,②より安全な望ましい行動へと誘導するような環境をつくる,③職員の転倒への恐怖感を緩和するためにも,施設が一丸となって転倒予防の方針を定める,ことなどが要点となる。

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© 2014 日本転倒予防学会
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