日本転倒予防学会誌
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日本転倒予防学会誌
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特集
原著
  • 内山 昌代, 鈴木 みずえ, 金盛 琢也
    原稿種別: 原著
    2024 年 10 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/04/04
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,地域高齢者の転倒予防行動を促進させるために,地域在住高齢者の転倒予防セルフケア行 動の実施状況を明らかにし,転倒予防セルフケア行動を分類し関連する要因を分析することである。

    【方法】2022 年4 月~7 月の期間にA 市内のシニアクラブに所属する高齢者を対象に自記式質問紙調査と身体能力 測定を実施して調査を行った。調査開始前に地域在住高齢者の転倒予防行動を査定する質問項目を作成した。調査終了後に転倒予防セルフケア行動を因子分析し分類を行った。転倒予防セルフケア行動と分類された転倒予防セルフケア行動を目的変数とし,年齢,夜間トイレ回数,健康管理自己効力感,転倒予防自己効力感,握力,立位バランスなどを説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。

    【結果】対象者208 名,平均年齢は79.1 ± 5.8 歳であった。転倒予防セルフケア行動15 項目のうち,実施率が高かっ た項目は「豆腐・肉・魚などのタンパク質を多く含む食品をとるようにしている」「はきものは自分の足の大きさに合う『かかとのあるもの』をはくようにしている」「牛乳や小魚などのカルシウムを多く含む食品をとるようにしている」の3 項目であり,実施率が低かった項目は「転倒予防のために,杖やシルバーカーを使用している」と「家の中の転びやすい場所について専門家からアドバイスを受けている」の2 項目であった。転倒予防セルフケア行動は「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」と「移動時の安全のためのセルフケア行動」の2 つに分類された。 転倒予防セルフケア行動の総合計点に関連する要因は,健康管理自己効力感(β=0.451)が最も強く,次いで握力(β=−0.185),転倒予防自己効力感(β=−0.149)であった。「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」の合計点に関連する要因は,健康管理自己効力感(β=0.439),握力(β=−0.179),立位バランス(β=0.180)であった。「移動時の安全のためのセルフケア行動」の合計点に関連する要因は,転倒予防自己効力感(β=−0.339),健康管理自己効力感(β=0.301),転倒リスク(β=0.159)であった。

    【結論】地域高齢者の転倒予防セルフケア行動の実施状況を調査した結果,実施率が高かったのは,「タンパク質やカ ルシウムを多く含む食品摂取」と「適切なはきものの着用」であり,実施率が低かったのは「転倒予防のための杖やシルバーカー使用」と「家の中の転びやすい場所について専門家からのアドバイスを受けること」であった。転倒予防セルフケア行動は「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」と「移動時の安全のためのセルフケア行動」の 2 つのタイプに分類された。転倒予防セルフケア行動は,健康管理自己効力感,握力,転倒予防自己効力感に関連することが示された。

  • 谷 佳成恵, 津田 彰, 村田 伸
    原稿種別: 原著
    2024 年 10 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/04/04
    ジャーナル フリー

    【目的】転倒と加齢に伴う身体,歩行,認知,精神および心理機能低下,住環境,社会経済状況の影響と関連が報告 されている。本研究では,住環境と社会経済状況がほぼ等質であると考えられる,住宅型有料老人ホーム入居高齢者を対象として,転倒と身体・認知機能との間の関連性を検討した。

    【方法】住宅型有料老人ホーム入居高齢者35 名(転倒経験群6 名,17.1 %;非経験群29 名,82.9 %)を対象とした。 過去1 年間の転倒経験の有無および身体(握力,指運動機能,下肢筋力),歩行,認知(総合的な認知機能,感覚・平衡機能)を測定した。

    【結果】転倒経験の有無を独立変数とした対応のないt 検定およびMann-Whitney のU 検定の結果,転倒経験群は非 経験群よりも,下肢筋力,重心動揺の前後幅および矩形面積に有意な低下が認められた。その他の項目に有意差は認められなかった。

    【結論】住宅型有料老人ホーム入居高齢者における転倒に関連する機能として,下肢筋力の低下と平衡機能の低下が 挙げられる。

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