日本転倒予防学会誌
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原著
地域在住高齢者の転倒予防セルフケア行動の実態・因子構造・関連要因
内山 昌代鈴木 みずえ金盛 琢也
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2024 年 10 巻 1 号 p. 61-73

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抄録

【目的】本研究の目的は,地域高齢者の転倒予防行動を促進させるために,地域在住高齢者の転倒予防セルフケア行 動の実施状況を明らかにし,転倒予防セルフケア行動を分類し関連する要因を分析することである。

【方法】2022 年4 月~7 月の期間にA 市内のシニアクラブに所属する高齢者を対象に自記式質問紙調査と身体能力 測定を実施して調査を行った。調査開始前に地域在住高齢者の転倒予防行動を査定する質問項目を作成した。調査終了後に転倒予防セルフケア行動を因子分析し分類を行った。転倒予防セルフケア行動と分類された転倒予防セルフケア行動を目的変数とし,年齢,夜間トイレ回数,健康管理自己効力感,転倒予防自己効力感,握力,立位バランスなどを説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。

【結果】対象者208 名,平均年齢は79.1 ± 5.8 歳であった。転倒予防セルフケア行動15 項目のうち,実施率が高かっ た項目は「豆腐・肉・魚などのタンパク質を多く含む食品をとるようにしている」「はきものは自分の足の大きさに合う『かかとのあるもの』をはくようにしている」「牛乳や小魚などのカルシウムを多く含む食品をとるようにしている」の3 項目であり,実施率が低かった項目は「転倒予防のために,杖やシルバーカーを使用している」と「家の中の転びやすい場所について専門家からアドバイスを受けている」の2 項目であった。転倒予防セルフケア行動は「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」と「移動時の安全のためのセルフケア行動」の2 つに分類された。 転倒予防セルフケア行動の総合計点に関連する要因は,健康管理自己効力感(β=0.451)が最も強く,次いで握力(β=−0.185),転倒予防自己効力感(β=−0.149)であった。「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」の合計点に関連する要因は,健康管理自己効力感(β=0.439),握力(β=−0.179),立位バランス(β=0.180)であった。「移動時の安全のためのセルフケア行動」の合計点に関連する要因は,転倒予防自己効力感(β=−0.339),健康管理自己効力感(β=0.301),転倒リスク(β=0.159)であった。

【結論】地域高齢者の転倒予防セルフケア行動の実施状況を調査した結果,実施率が高かったのは,「タンパク質やカ ルシウムを多く含む食品摂取」と「適切なはきものの着用」であり,実施率が低かったのは「転倒予防のための杖やシルバーカー使用」と「家の中の転びやすい場所について専門家からのアドバイスを受けること」であった。転倒予防セルフケア行動は「身体機能を向上させるためのセルフケア行動」と「移動時の安全のためのセルフケア行動」の 2 つのタイプに分類された。転倒予防セルフケア行動は,健康管理自己効力感,握力,転倒予防自己効力感に関連することが示された。

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