日本転倒予防学会誌
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原著
地域在住高齢者における診断された運動器疾患数と転倒発生の関連についての横断的研究
和田 崇松本 浩実尾崎 まり萩野 浩
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2017 年 3 巻 3 号 p. 37-45

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抄録

【目的】本研究の目的は地域在住高齢者における診断された運動器疾患数と転倒発生の関連性および1つ以上の運動器疾患の診断歴のある高齢者における転倒関連因子を明らかにすることである。【方法】鳥取県日野郡日野町の特定健診および後期高齢者健診を受診した273名中,223名(男性:82名,女性:141名,平均年齢:73.5±8.3歳)を研究対象とした横断的研究である。年齢,性別,body mass index (kg/m2),内科的併存疾患の有無を聴取後,自己記入式アンケートにて視力低下,聴力低下,現在の服薬状況および成人してからの既存骨折の有無,現在までの運動器疾患(変形性膝関節症,変形性股関節症,腰部脊柱管狭窄症,変形性腰椎症,腰椎すべり症,骨粗鬆症,関節リウマチ)の診断歴の有無を聴取した。足腰の痛みについては,visual analogue scale(VAS)を用いて評価した。身体・運動検査として体組成測定器による筋肉量測定,握力測定,歩行分析を行った。転倒については,過去1年間での転倒経験の有無を聴取した。1回以上の転倒経験があった者を転倒群,なかった者を非転倒群とし,2群に分け比較した。さらに,運動器疾患の診断歴のある86名(男性:25名,女性:61名,平均年齢:75.2±7.2歳)を選択し,転倒群と非転倒群に群分けし,二項ロジスティック回帰分析にて転倒関連因子を抽出した。【結果】研究参加者全体では,38/223名(17.0%)に転倒の既往があった。転倒群,非転倒群での変数比較において,VAS,補正四肢筋量は転倒群が有意に高値であり,診断された運動器疾患数は多い傾向にあった。二項ロジスティック回帰分析の結果,診断された運動器疾患数が3つ以上になると転倒発生が5.32倍と有意に上昇することがわかった。運動器疾患の診断歴のある者では,19/86名(22.1%)に転倒の既往があった。二項ロジスティック回帰分析の結果,VAS(odds ratio(OR):1.042,95% confidence interval(CI)1.016-1.069,p=0.002)と既存骨折(OR:5.422,95%CI1.323-22.217,p=0.019)が転倒関連因子として抽出された。【結論】複数の運動器疾患の診断歴のある者ほど,転倒頻度が高くなることが明らかとなった。さらに,足腰の痛みの強さと既存骨折歴は運動器疾患の診断歴のある高齢者の転倒関連因子であった。

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© 2017 日本転倒予防学会
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