日本転倒予防学会誌
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特集
転倒災害の現状と対策
川越 隆
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2020 年 6 巻 3 号 p. 9-14

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抄録

近年,労働災害のなかで,転倒災害の占める割合が増加している。転倒災害は,2006年の休業4日以上の型別死傷災害で「はさまれ・巻き込まれ」を抜いてワーストワンの労働災害となり,それ以降増加の一途を辿っている。これら背景には,「高年齢労働者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の改正により60歳以上の労働者が増加したことが要因と推測される。転倒災害は,50歳以降の高年齢労働者に多く発生しており,その要因としては,運動や視覚機能の低下や身体・精神的疾患との関連が想定される。転倒災害のリスク要因は,外的要因,社会管理的要因,内的要因,さらに傷害増幅要因の4つに大別される。これまで,転倒災害の防止対策においては,外的要因や社会管理的要因の側面からのアプローチが一般的であった。今後は,転倒災害の防止の視点に,外的要因,社会管理的要因に加え,内的要因や傷害増幅要因,つまり高年齢労働者の心身機能や疾病状況,運動器等の耐性等も考慮した総合的なアプローチによる対策の実施が望まれる。

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