鉄と鋼
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
特集号「鉄鋼材料の摩擦接合技術」
特集号「鉄鋼材料の摩擦接合技術」まえがき
藤井 英俊
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2022 年 108 巻 12 号 p. 901

詳細

摩擦攪拌接合(FSW)や線形摩擦接合(LFW)などの摩擦接合技術は,材料を溶融させることなく,固相で接合を行うため,接合に伴う特性の劣化を抑制でき,場合によっては特性を向上させることも可能である。さらに最近の技術の進歩によって,A1点以下での接合,すなわち,無変態での接合も可能となっている。

これまで,溶接・接合が困難という理由で,使用されてこなかった素材は多数あり,溶接性が新規鋼材開発の制限となってきたのも事実である。そこで,新規摩擦接合技術を最大限活用して,新たな鋼材開発に繋げようという動きも活発化してきた。

2019年に,日本鉄鋼協会に研究会II「摩擦接合技術の鋼橋等インフラへの適用性検討」が設立され,2021年には,鉄鋼協会研究プロジェクト「摩擦接合技術の高度化と鋼材設計指針の提案」が開始された。溶接耐候性鋼において,FSW施工性の確認,その継手の機械的特性・耐食性に関するデータの取得,さらに,従来添加が避けられてきた元素(P,C)を積極的に活用した母材と接合部の特性を向上させる可能性の探索や継手特性に及ぼす合金元素の影響の調査を進めてきた。

摩擦接合技術を鋼橋等社会インフラへ適用することは,インフラ鋼構造物の長寿命化の実現や溶接制約条件の緩和に着眼した合金元素の活用・溶接制約ウインドウ拡大を通じた鉄鋼材料ポテンシャルの再認識などの効果が期待できる。

そこで本特集号では,上記研究会,プロジェクトの成果に加えて,いくつかの新規鋼材のFSW,高P鋼,高C鋼やマルテンサイト鋼のFSW,LFWとその継手特性,水中FSW,異種材のFSW,厚鋼板のFSW,回転ツールにかかる負荷のシミュレーション,LFWプロセスのシミュレーション等の研究成果も掲載した。摩擦接合技術について鉄鋼協会の会員各位,一般読者に纏まった形で知っていただくことで,当該接合技術の認知度が向上し,さらなる合金開発の幅が広がることを祈念している。

 
© 2022 一般社団法人 日本鉄鋼協会

This is an open access article under the terms of the Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivs license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top