鉄と鋼
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脈石成分含有の焼結鉄圧延板の機械的性質
鈴木 良和佐山 惣吾西田 恵三
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1980 年 66 巻 3 号 p. 372-381

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抄録

脈石鉱物を含んだ還元鉄粉を粉末冶金用原料として使用する場合の実用的な見通しを得ることを目的とし,純鉄粉とヘマタイトまたは異種酸化物ならびに流動還元で得られた還元鉄粉の混合圧粉体を加工し,得られた焼結鉄圧延焼なまし板における脈石成分の分布と組成,ならびにこれらの機械的性質への影響について検討した.その結果をまとめると次のとおりである.
(1)脈石成分を5.0wt%(酸素含有量:1.8wt%)含有する還元鉄粉と純鉄粉の混合圧粉体から焼結鉄圧延板を製造する場合,混合量が50wt%(酸素含有量:約1.0wt%)を越えると板材にする過程で割れを生じる.(2)焼結鉄圧延焼なまし板中の脈石成分は,圧延面に平行な薄い板状の分布を示し,圧延方向に伸びており,おのおのの金属酸化物がその中で共存または点在している.(3)焼結鉄圧延焼なまし板中に酸化鉄を含有するものは強度増加と伸び率減少におよぼす影響は認められるが,焼結および焼なまし中の酸化により酸素含有量を増加させてもその効果は少ない.(4)脈石成分を含む還元鉄粉を混合したものは,低い温度で焼結し圧延後の焼なましをしたほうが強度増加への影響は大きい.その原因の一つとして圧延加工による酸化物の微細化と分散の促進があげられる.(5)これら圧延焼なまし板の引張り後の破面は,脈石成分の少ない場合は塑性変形をともなう延性破壊面であり,脈石成分が多いものはら密な層状組織の断面にそつてき裂が伝播した破断面となる.

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