1984 年 70 巻 2 号 p. 238-245
加工硬化したオーステナイトからの拡散変態のkineticsの研究の一環として本研究ではkineticsの取り扱いが比較的容易なパーライト変態をとりあげ,共析鋼に近いSKD 6を使つて未再結晶域で30%圧延することによつてパーライト変態がどのような影響をうけるのかについて研究をおこなつた,得られた主な結果は次のとおりである.
(1)加工により,パーライト変態は著しく促進される.
(2)パーライトの成長速度に対する加工の影響は30%圧延ではほとんど認められない.
(3)パーライトの核生成場所は無加工材ではほとんどオーステナイト粒界であるが,加工により粒内の焼鈍双晶境界や変形帯,その他(非金属介在物との界面など)にもパーライトが生成するようになる.これらオーステナイト粒内で核生成するパーライトの変態率は30%圧延を施した場合全変態率の約25%であつた.
(4)粒界面上での単位面積当たりの核生成速度は30%圧延により約27倍増加する.