鉄と鋼
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炭酸バリウムによる高炭素-高マンガン-鉄合金の脱りん
藤田 正樹片山 裕之山本 明松尾 充高
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1988 年 74 巻 5 号 p. 816-822

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抄録

マンガン合金溶湯([Mn]:5~60%)に対して,種々の塩基性酸化物の炭酸塩を含むフラックスを添加して脱りん実験を70kg規模で行つた.主な結果は次のとおりである.
(1)CaCO3系ではほとんど脱りんがおこらない.NaCO3系とLi2CO3系では脱りん率が低く,かつ復りん傾向がある.これに対してBaCO3系は比較的脱りん率が高く,復りん傾向が認められないことから,BaCO3系に絞つて実験を進めた.
(2)BaCO3系フラックスによるマンガン合金処理時には,クロム合金の場合とは異なり,BaCl2を配合せずBaCO3単味の方が得られる脱りん率は高い.これは生成したMnOがスラグ融点を低下する作用があるためである.
(3)BaCO3系フラックスによる脱りんを有利に進めるには,(i)処理温度が低いこと,(ii)[%C]は飽和値より少し低い程度であること,(iii)(%BaO)を極力高い値に保つためにSiO2などの混入を抑制することなどが望ましい.
(4)[%Mn]に応じて,雰囲気の酸素ポテンシャルの調整やフラックスインジェクションなどを行つて,生成するMnOを適正量((%MnO):20~40%)に制御することは,効率的な脱りんのために有効である.
(5)通常の高炭素フェロマンガン溶湯を,約1300℃においてBaCO3で処理すれば,(P)/[P]として15~20程度が期待できる.

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