本稿は、音楽科指導法の中でもとくに関係性という点に着目したものである。子どもが生き生きと学んでいる授業、やる気に満ちた授業、子どもが積極的に学ぼうとしている授業、つまりモチベーションが高く保たれている授業では、教師と子ども、あるいは子ども同士がどのような関係性を築いているのか、それらを授業観察から探るものである。
音楽専科が受け持つ小学校1年生の授業から順に、中学年、高学年と7つの事例を提示する。それらの中で音楽科における技能習得の問題をどのように考えるか。また、教師の言葉がけ、指示の出し方、具体的な指導方法などにも触れ、それが子どものモチベーションにどのように関わっているのかを考察する。
子どもの何を育むのか、ということに関し、教師によってその目標やアプローチのしかたは違っても、関係性を築くことに留意している点では共通しており、授業における関係性の検証が今後は重要な研究課題のひとつになると考えられる。