東京未来大学研究紀要
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原著
  • ― 保育職と一般企業間のトランジションに焦点を当てて ―
    浅井 かおり, 浅井 拓久也
    2024 年 18 巻 p. 1-13
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本研究では保育者養成校を卒業して保育職に就いた保育者が、一般企業への就職に移行するまで及び移行時に注目をした。保育職から一般企業職への移行に影響を与えた要因や気持ち等の変化、移行時に直面した事柄に焦点を当て検討をした。

     幼稚園教諭経験者2名に半構造化インタビューを依頼し、複線径路・等至性モデル(TEM)を用いて分析を行った。TEM図を作成して分析を行った結果、共通点が見出された。保育職から一般企業職に移行したいと考えた理由については、現状からの脱却、別の環境や業種で自分の力を発揮することへの期待、他業種で自分の力を試したいという挑戦心であった。一般企業職への移行を決意するタイミングについては、年長児を受け持った経験、3歳児から5歳児までの全ての学年を受け持った経験という幼稚園特有の区切りが関係していた。

     また一般企業職への移行時については、別業種に就き世界が広がったことへの楽しさを感じ、対子どもから対大人になった難しさや生活リズムの違いに大変さを感じながらも契約や商談等について一から学び、保育職で培ってきたコミュニケーション能力や保育技術を生かしながら移行していったことが明らかになった。

     保育者としてのキャリアを構築していった後に、保育の知識や技術、幼稚園教諭として培ってきた力を生かしながら新たな分野で自身の力を蓄え磨いていく。キャリアを広義的に捉えたさいに保育職での経験を生かしながら長期的、継続的にキャリアを構築していく、職業者としてのキャリア構築例が示された。

  • 井梅 由美子
    2024 年 18 巻 p. 15-26
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     昨今、乳幼児期の母親の育児不安や育児支援についての研究は多くなされている。しかしながら、小 学生以後の子どもを育てている母親についての研究は少ない。そこで本研究では、小学生の子を持つ母 親300名にオンライン調査を実施し、子育てにおける困り感や、育児不安、夫/実母/ママ友からのサポー ト、幼少時の親子関係等を尋ねた。子育ての困り感について、子の性別と年齢による差を検討した結果、「食 事の習慣、しつけ」、「子の学校でのトラブル」「成長発達」等4項目で男子の得点が高かった。また、自 由記述で聞いた子育ての困り感について、KJ法により分類を行い、10大カテゴリー、36小カテゴリーを 得た。最後に、育児不安と、困り感、幼少期の親子関係、夫/母/ママ友サポートとの関連を検討したと ころ、育児不安と困り感では、正の相関が認められ、幼少期の親子関係と夫/ママ友サポートも育児不安 に関連していることが分かった。

  • ―幼稚園教諭と保育教諭に対するインタビューを通して―
    岩井 真澄
    2024 年 18 巻 p. 27-43
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本稿では、幼稚園教諭と保育教諭へのインタビューを通して、個別・具体的で多様な保育の営みの中 で抱く保育者の思いや葛藤、子どもや保育者間の関係性等、実践上の課題とその背景を明らかにすること で、カリキュラム・マネジメント実現のための視点を見出すことを試みた。インタビューから見出された 3つの視点は、①保育の質の担保と業務の効率化のバランス②学び続ける保育者としての取り組み③ミド ルリーダーの育成と保育者アイデンティティーの再構築である。これらは、「園運営」と「教職員(保育者) の資質向上」が軸となっており、組織として保育者の資質向上を支えることが、カリキュラム・マネジメ ント実現に繋がることを保育者の語りから確認できた。

  • 大内 善広, 野澤 義隆, 萩原 康仁
    2024 年 18 巻 p. 45-52
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本研究は,保育所や幼稚園,認定こども園における保護者支援の基礎となる,保育者と保護者のコミュ ニケーションについて,どのような内容や方法でコミュニケーションを行うことが,保護者のコミュニケー ション満足感に繋がるのかについて,父親と母親の違いを含めて検討した。2021年2月にWeb上にて未 就学児の子どもがいる父母子が同居状態の夫婦を対象に調査を行い,517件のペアデータを用いて分析し た。分析の結果,父親と母親では異なる結果が示されたが,受容的なコミュニケーションがコミュニケー ションへの満足感に繋がることは父親・母親に共通して示された。

  • ―教科書を用いた新聞記事の本文理解についての推定分析を通じて―
    紙本 裕一
    2024 年 18 巻 p. 53-61
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     新聞記事には数量の推移を表したグラフなどが用いられているので,新聞記事を算数・数学科での教材に活用することは十分想定されうることである。しかし,それが中々実現できないということは,新聞記事の本文理解に何かしらの困難があることが想定される。本稿では,教科書の動詞と名詞に着目し,それらを使って新聞記事の動詞と名詞がどの程度カバー可能なのかについて推定値を明らかにする。分析の結果,動詞+名詞のカバー率は,小学6年だと最大でも37%程度,少なくても15%程度であった。動詞のみでのカバー率は小学6年だと最大で71%程度,少なくても37%程度であった。名詞のみでのカバー率は小学6年だと最大で56%,少なくても28%程度であった。低学年や中学年で新聞を取り扱うことは困難であると推定される。しかし,新聞を教材として取り扱うのであれば小学校高学年であればその可能性があるかもしれない。

  • 川原 正人
    2024 年 18 巻 p. 63-71
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     今この瞬間に注意を集中し、評価や価値判断をせずありのままにすべてを受け入れようとすることをマ インドフルネスと呼んでいる。本研究では個人の認知やイメージの構造を分析の対象とするPAC分析を 用い、マインドフルネスによってもたらされる体験がどのようなものであるのか検討した。調査対象者自 身によってなされた解釈から、ポジティブとネガティブの間にいる、あるいは両方体験しているという感 じや、心や頭、体、感覚といった心身のさまざまな場所や機能に生じる変化がマインドフルネスによって もたらされる効果として見出されたが、その作用に伴うイメージの内容は均一ではなく、個人によって語 られ方に差異があることも示唆された。

  • 小谷 博子
    2024 年 18 巻 p. 73-83
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本研究では、赤ちゃんふれあい体験学習を実施し、体験の前後に彼らの子育てのイメージがどのように変化するのかについて調査することを目的に研究を行った。大学生を対象に、赤ちゃんふれあい体験を実施前後で自己意識について自記式質問紙調査が行われ、t 検定による分析がなされた。その結果、対児感情においてふれあい体験前後で回避項目と接近項目の両方に有意な差が認められた。また、親準備性尺度についてもふれあい体験前後で「乳幼児への好意感情」「育児機会」「育児への自信」に有意な差が認められた。乳幼児と接する機会を意識的に増やしていくことは、将来、親となる世代が子どもや家庭を知ることになり、子どもとともに育つ機会を得ることで人への関心や共感力を高めることに繋がる可能性が示唆された。

  • ―1945年以降の作品を中心に―
    佐々木 由美子
    2024 年 18 巻 p. 85-94
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本研究は、昔話の再話や受容のありようについて、保育との関わりの中で明らかにすることを目的としている。その手がかりとして、「ぶんぶくちゃがま」を取り上げ、その変遷を追った継続研究である。1945年以降の絵本や紙芝居を中心に分析し、その変遷をみていった結果、大きな変化が認められた。一つは物語構造の変化であり、二つ目は中心場面の変化である。物語が簡略化し、構造自体が変化することによって、物語自体がわかりやすくなるとともに、人と動物の交流や友情、親切といったテーマをより鮮明に描きだそうとする傾向がみられた。また、中心場面については小僧さんたちが茶釜を追いかけ回す場面が描かれなくなり、見世物の場面は見開き1頁で、つなわたりが中心として描かれ、見世物の固定化の傾向は強まっていると言える。

  • 鈴木 公啓
    2024 年 18 巻 p. 95-103
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     The act of savoring food, characterized by a profound appreciation of the five senses during eating, is considered a fundamental component of eating. This study aimed to clarify the characteristics of savoring food by examining its position with several dietary habits and its impact on eating-related QOL and mental and physical health. A total of 649 Japanese adults( men, 314; women, 335; mean age = 45.41, SD = 14.03) in their 20s to 60s participated in the web survey, in which they completed several questionnaires. The results showed that savoring food was classified in the same category as eating traditional cuisine and eating cuisine for annual events. In addition, it is shown to be associated with eating-related QOL and mental health. It is expected that savoring food is an effective and convenient tool for improving eating-related QOL and mental health in daily life.

  • 田澤 佳昭
    2024 年 18 巻 p. 105-116
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     ゼーリック米国務副長官が2005年9月、中国に対して「責任あるステークホルダー(利害関係者)になるよう促す必要がある」と述べた後、ラムズフェルド米国防長官の任期最終年の06年には、米国防総省が『4年ごとの国防計画見直し』06年版及び米国防長官府『年次議会報告書』06年版で、戦力投射能力を拡大させる中国を「破壊的(disruptive)」と形容する方向に転じ、『国家安全保障戦略』06年版で、中国への関与の方策を「諫止(dissuasion)」から、より積極的な「選択形成(shaping)」と「将来の戦略的不確実性のヘッジ(hedge)」に切替えたことは、田澤(2023)の指摘したところである1。 後任のゲーツ米国防長官が選択形成を引継いだ後、米国の戦力投射能力を脅かす中国の攻勢は現実のものとなり、米国も対応を迫られるようになった。本論文は、G.W.ブッシュ政権末期、ゲーツ米国防長官就任以後2年間の米国の対中国安全保障戦略を各種安全保障関連文書によって明らかにしたものである。

  • 藤後 悦子, 山極 和佳
    2024 年 18 巻 p. 117-125
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     中高生で「汗かき」の子どもを持つ母親200名を対象に母親の心配事を明らかにした。子どもの汗に対して子ども自身がどの程度気にしているかを母親に確認したところ、合計59.5%の子どもが汗を気にしていると母親が認識していた。また母親の認識では、子どもが汗を気にするようになった平均年齢は、11.07歳(SD=3.42)であった。「汗に対する人の目」は母親の心配よりも子どもからの相談が多く、「対人関係における汗に関する困りごと」と「学校生活(授業や部活など)における汗に関する困りごと」は、母親の心配の方が多かった。母親自身の汗かきの程度による心配事の内容を検討すると、「汗の匂い」「対人関係における汗に関する困りごと」「汗への対処」において、汗かきである母親の心配事が有意に多く、汗かきでない母親の心配事が有意に少なかった。子どもの汗に関する相談相手は、夫が最も多く、続いてかかりつけ医、教師であったが「誰にも相談したことがない」母親も61.5%と高かった。心配事に関する自由記述の内容に対して共起分析を行った結果、「臭さを気にする」、「手の汗等に対する友達からのネガティブな反応」、「汗による洋服の色の変色」、「汗をかくことを気にする」、「周囲のネガティブな反応への心配」、「汗の匂いが気になる」に分類された。今回の調査より子どもの汗に関して母親も傷ついており、親子ともにサポートの必要が示唆された。

  • ―小学校児童の文字学習、指導に示唆すること―
    橋元 知子, 佐藤 久美子
    2024 年 18 巻 p. 127-136
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     This study examines pre-primary school children’s interest and mastery of the alphabet and vocabulary by validating the effects of an English learning material created to acquire the four skills of English holistically. A literacy development test and a parental questionnaire were administered before and after their learning with the materials. Analysis of the data suggests that the children seemed to have recognized the connection between uppercase and lowercase characters in the post-test. In addition, children appeared to have gained some understanding of listening to letters and vocabulary and connecting these with written characters. Furthermore, their parents seemed to have noticed an increase in their children’s recognition of letters after learning. The results imply that pre-primary school children may be more receptive to learning the alphabet and vocabulary than commonly perceived. In the context of Japan, although English writing instruction formally begins from the fifth grade of primary school at present, it may be possible that even younger children such as those in the third grade who formally receive instruction in English activities, may be susceptible to letter and vocabulary instruction.

  • 橫畑 泰希
    2024 年 18 巻 p. 137-147
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     保育士養成課程に在籍する大学生が社会的養護や関係施設等に対しどのようなイメージを抱いているのか、社会的養護の授業を通してそのイメージがどのように変化したのかについて検討することを目的とし、「社会的養護Ⅰ」の履修前後において、24項目の形容詞対を用いたSD法によるイメージ測定調査を行なった。社会的養護では24項目すべてが、児童養護施設では21項目が、乳児院では22項目が、里親では22項目が、履修後において肯定的度合が高くなり、その多くの項目に有意な差が見られた。そのうち「親切な…」「活動的…」「よい…」「あたたかい…」の4項目は、社会的養護・児童養護施設・乳児院・里親の全てで評定平均2点を超えており、「社会的養護や関係施設はよい活動を積極的に展開しており、要保護児童にとって親切であたたかい活動である」といったイメージを抱いていることが了解された。これらのことから、「社会的養護Ⅰ」の授業を履修し学びを得ることで、社会的養護や関係施設等へのイメージが肯定的に変化することが示され、とくに外部講師による臨場感のある現場の話を聴くことが、イメージの肯定的な変化や就職意志を高める可能性になることが示唆された。

実践報告
  • 杉本 雅彦, 太田 英樹, 野島 誠紘, 柳生 崇志
    2024 年 18 巻 p. 149-162
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     ハラスメント防止のための啓発活動として,東京未来大学ではハラスメント防止規程の設定,相談の流れなどを記したリーフレットの配布,加害者にならないための留意,コンプライアンスに関する研修の内ハラスメント防止に注力し,コンプライアンス委員会による毎年のハラスメント防止研修などを行ってきた。東京未来大学のハラスメント防止研修は,大学におけるハラスメントに関する正しい知識の普及啓発,そして,ハラスメント問題に対する知識を深めることを目的として,「ハラスメント防止eラーニング研修」を2020年度から2022年度の3年間実施した。本報告は,3年間のアンケート結果より,当該研修の内容や方法の適否の検討結果,および,ハラスメントに関する各種の課題について報告した。

研究ノート
  • ―発声に対する感情評価分析から―
    岩﨑 智史, 杉本 雅彦, 金塚 基
    2024 年 18 巻 p. 163-170
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     日本の小・中学・高等学校の教育課程には、集団的な応援活動が実施されるようなプログラムが多くみられ、児童・生徒はそれらの機会に同級生や仲間、あるいはその家族を巻き込んで応援されたり応援したりしてきた。本研究では、高等学校の応援団を取りあげて、応援時の演技における重要な構成要素である発声に着目し、発声により感情が喚起されるかを検討することを目的とした。本実験は、応援団員と非部員とのエールの発声時における感情喚起に注目し、多面的感情状態尺度により、応援の受け手の感情の分析を行った。その結果、音声のみのエールであっても活動的快感情が喚起される可能性が示唆され、応援団員では訓練期間によって、より強く活動的快感情を喚起する可能性があることが明らかになった。

  • ―スポーツ・運動に対する態度を用いた検討―
    大橋 恵, 澤海 崇文, 井梅 由美子, 藤後 悦子
    2024 年 18 巻 p. 171-180
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     Novel measurement, not self-report scale, has been developed these days to measure implicit attitudes that individuals hold without their consciousness. The present study aims to assess testretest reliability of measuring implicit attitudes toward sports and exercise using both the Implicit Association Test( IAT) and the Single-Category Implicit Association Test( SC-IAT). On assumption that desirability and enjoyment embody separate dimensions of attitudes, separate sets of stimulus words were employed in the implementation of each test to distinguish between cognitive and aflective attitudes. Through three online experiments, participants were asked to complete either IATs or SCIATs on two occasions with an interval in between. Study 1 and Study 2 revealed moderate test-retest reliability of IAT and SC-IAT respectively. In case where different category labels were given to measure affective and cognitive attitudes, Study 3 showed a moderate test-retest reliability of SC-IAT for measuring affective attitudes, but the reliability was not sufficient to measure cognitive attitudes. The data suggests that affective attitudes toward sports and exercise constitute a more foundational aspect that demonstrates relatively lower susceptibility to situational variations, compared to cognitive attitudes.

  • ―従来型いじめとネットいじめの対比から―
    須田 誠
    2024 年 18 巻 p. 181-192
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本邦では2013年にいじめ防止対策推進法が施行されたが,いじめの認知件数は増加し続け,2021年度には過去最高になった。いじめの態様にも変化があり,対面での心理的いじめ・物理的いじめに加えて,インターネットを介して行われるいじめも出現し,やはりそれも2021年度に認知件数が最高となった。本稿では,従来の対面でのいじめとインターネットを介して行われるいじめの動向を概説し,いじめが子ども・若者に与える影響を整理した。さらに,いじめの四層構造における傍観者に注目しながら,いじめの背景にあると思われる近年の子ども・若者の人間関係の変容と人としての成熟について論評した。そうすることで,いじめ対策としてのアイデンティティ形成の促しとシティズンシップ教育の重要性について解説した。

  • ―Ripple 行政教区 Coldblow Farm を対象としたパイロットスタディ―
    宅間 雅哉
    2024 年 18 巻 p. 193-202
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本稿では,宅間(2023)に続いて,ケント州Ripple行政教区Coldblow Farmの地名由来の背景を考察した。今回は,2021年12月26日から2022年3月5日の間に現地の天気予報から得られた気象データを前稿と同一の手法で分析するとともに,データ収集期間中の天気概況についても概説した。その結果Coldblow Farmは,2021年夏とは異なる結果をいくつか伴いながらも,地域の中核都市Canterburyよりも恒常的に強い風,低い気温と体感温度で特徴付けられ,体感温度と気温の落差も大きく,相対的に寒いと感じられる傾向にあることが明らかになった。風向は,両地点とも南・南南西・南西・西南西・西・西北西・北西の7方位の割合が高いが,より寒い風をもたらすと思われる北よりの3方位,すなわち西・西北西・北西の割合は,わずかながらColdblow Farmの方が大きい。これらの結果は前稿の結論にほぼ合致し,気候地名としてのColdblowを提案するに足る根拠となった。

  • ―― 附『特別日誌』――
    佐藤 久恵
    2024 年 18 巻 p. 211-221
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/08/09
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     本稿では、大正十一(一九二二)年七月七日、刈田郡宮尋常高等小学校の小野さつき訓導が、校外での美術の授業(写生)のために担任する児童と共に写生場所と設定した白石川に訪れ、暑さのためか偶然に川遊びを始めて溺れた児童のうち、二名を救助し、その後、一名と共に溺れ殉職した事実を『学校日誌』(大正十一年度)から追跡し考察した。

     分析の視点は、以下の二点である。①小野さつき訓導殉職の出来事の『学校日誌』への記録がどのようになされているか、出来事の前後で学校はどのような状況だったのか。②同時期に作成された『小野訓導殉職後特別日誌』と称された文書はどのような記録があるのか、である。

     学校内部の公的文書『学校日誌』と『小野訓導殉職後特別日誌』の記録を確認し、紹介する。

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