2022 年 16 巻 p. 99-110
米国にとって中国は、第二次世界大戦以前から現在にいたるまで、商業上のパートナーとして大いに期待する相手国であり、競争相手であった。本論文では、南シナ海問題に対する米国の関与についての関心から、2000年以降、中国の軍事力に関する米国防長官府の報告書が作成されるまでの経緯をみていくとともに、初期の報告書が中国の脅威をことさら強調することなく、中国の軍事力の拡大を冷静に整理し、南シナ海問題への警戒を高めていった過程を明らかにした。2006年以降、中国の脅威を「破壊的能力」と形容し「航行の自由作戦」で南シナ海への関与を深めていく前の、緊張感が高まりつつある段階の米国の対中国安全保障戦略を明らかにしたものである。