季刊地理学
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論文
広島県北広島町のデマンド型交通における交通サービスの供給方式と運営関係者の組織化過程
── ホープタクシー大朝を中心に ──
田中 健作
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2012 年 63 巻 2 号 p. 67-84

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抄録

本研究では,広島県北広島町大朝地区におけるデマンド型交通(DRT)のサービス供給方式と運営関係者の組織化過程を検討した。
国や広島県の地域公共交通政策が変更される中,北広島町は,町村合併に伴う公共交通再編成を進め,DRTを導入した。北広島町大朝地区の場合は,多様なアクターがDRTの運営に関与し,利用特典を独自に設定したり,車両を積極的に利活用したりすることで経営基盤を強化させていた。こうした特徴を持つ大朝地区のDRTの運営関係者の組織化過程を考察すると,町は交通事業者側の経営自由度を高め,その下で大朝地区の交通事業者は,独自の運営方式を可能とする緩やかなネットワークを既往の地域的な諸関係を基にして構築していたことが判明した。そこでは,キーパーソンとなる交通事業者のH氏が,利用者の視点からサービスが向上されるよう,運行を支援する地区内の各事業者を位置付けていた。一方の運行を支援する各事業者も自らの活動のツールとしてDRTを位置付けた。これらの結果,交通経営と各アクターの事業の運営の双方にメリットが生み出されるようなサービス供給体制が構築されていた。

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© 2012 東北地理学会
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