本研究では政府や周辺地域から過度な期待を押し付けられた移住者の存在を念頭におき,コンテンツを利用した「観光まちづくり」に関わる組織と移住者との関わりを考察した。その結果,「景観」を創り出すことが要求される「観光まちづくり」の取り組みは,移住者を媒介にした流動的な組織により展開することが明らかになった。その背景には以下の3つの理由が存在する。第一にコンテンツの権利関係の処理が複雑であるため,取り組みがインフォーマルな取り組みにならざるを得ない点。第二に短期的に経済的利益が得られるため,組織内での意見の食い違いが生じやすいにも関わらず,景観の所有者が存在せず,組織内の調整の担い手が確保しにくい点。第三に意見の食い違いにより組織が流動的になるため,各アクターを媒介しつつ事務作業を担う人材が必要となること。しかし,正当な対価の支払いなしに,組織化の媒介となり得る移住者を確保し続けるのは困難である。そのため,景観を伴わない地域でのコンテンツを利用した「観光まちづくり」への期待は大きいものの,その持続可能性は低いといえる。