季刊地理学
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研究ノート
  • ─山形県鶴岡市越沢集落を事例に─
    渡辺 理絵, 髙山 月花
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 76 巻 2 号 p. 61-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
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    本研究は山形県鶴岡市の中山間地に位置する越沢集落を対象に,高齢者を含む世帯内の労働力配分に着目した,多元的な食料調達の特徴について検討した。買い物は家事の一つであり,買い物と調理は効率性などを理由に同一世帯員によって遂行されやすい。この点をふまえ本研究は世帯内の家事戦略という観点から多様な家族類型の世帯を調査した。その結果,高齢者のみ世帯では買い物支援サービスの利用は限定的で70歳代までは運転による移動を伴う買い物が主要な食料調達手段となっていた。運転しない80歳代の住民でもバスの利用や他出子の支援によって市街地の食料品店の利用がみられた。また高齢夫婦のみ世帯では家事の効率性の観点から買い物と調理を高齢の妻が担っていた。ただし高齢の妻の負担軽減から高齢の夫による運転を伴う買い物行動がみられた。複数世代世帯においても,子世代の就労を理由に高齢親が買い物と調理を担当し,その高齢親の負担軽減を考慮して買い物支援サービスが利用されていた。各世帯では世帯員の就業状況や健康状態などに配慮しながら,世帯内労働力配分の最適化をはかりつつ多元的な食料調達方法を志向する傾向があることを明らかにした。

  • 小元 久仁夫
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 76 巻 2 号 p. 79-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
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    ビーチロックの形成年代は,潮間帯の堆積物を膠結した炭酸カルシウムを試料として決定するのが望ましい。伊平屋島(いへやじま)北部と南部の礫岩質ビーチロックの形成年代と膠結物質の化学組成を明らかにするため,大礫や中礫を膠結している泥質な石灰質堆積物を採取した。この堆積物は砂礫を膠結した炭酸カルシウムを多く含むと推定して,AMS(加速器質量分析計)による14C年代測定とICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)による元素分析を行った。その結果,伊平屋島北部アッチャビシ海岸の試料から3868±61 yr BP,3867±61 yr BPと3185±59 yr BP,また南部テライバル海岸の試料から4749±64 yr BP,3050±60 yr BPおよび2216±62 yr BPの14C年代が得られた。一方,膠結物質6試料について元素分析を行った結果,北部アッチャビシ海岸の3試料は平均35.8%のCa(89.5%相当の炭酸カルシウム)を,また南部テライバル海岸の3試料は平均31.9%のCa(79.8%相当の炭酸カルシウム)を含むことが明らかになった。伊平屋島はおもに非石灰岩で構成されており,礁池に流入する大河川がないことから,Caは海水起源と推定される。海水の炭酸カルシウムが晶出または沈殿して潮間帯の砂礫を膠結した結果,礫岩質ビーチロックが形成されたと推定する。

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