季刊地理学
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研究ノート
ミャンマー国サイクロン・ナルギス災害での国際人道支援における情報収集
古市 剛久
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2012 年 64 巻 3 号 p. 91-101

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抄録

2008年5月のミャンマー国サイクロン・ナルギス災害を取り上げ,自然災害対応時に国際人道支援組織が収集する情報は何か,またどのような経路でその情報を収集するのかを調査し,分析した。緊急段階で収集した情報は,「被災情報」,「支援ニーズ情報」,「支援調整情報(他の支援組織の活動情報)」,「地域情報(地図や社会経済データ)」,「災害を起こした自然現象の科学情報」であった。復興段階では緊急段階で収集した情報に加え「セクター毎の支援ニーズ情報」を収集した。地域情報はこれまで指摘されてきた復興段階だけでなく,緊急段階でも必要とされていることが分かった。緊急段階において情報は「国連機関」,「現地の人的ネットワーク」,「ウェブサイト」,「独自の現地調査」を通じて収集された。情報収集過程は支援組織の特徴を反映しており,「現地ネットワーク型」,「本邦収集型」(現地に常駐の活動拠点を持たない支援組織),「独自調査型」に類型化できる。復興段階においては緊急段階での情報源に加えて「現地メディア」が入る。ウェブサイトは,緊急段階においてさえも「本邦収集型」の支援組織に利用され,復興段階においてはそれ以外の支援組織にとっても有力な情報収集経路として利用される。

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© 2012 東北地理学会
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