季刊地理学
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論説
縄文時代中期後半の岩手県域における竪穴式住居出入口の方位決定要因について
駒木野 智寛
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2016 年 67 巻 4 号 p. 221-238

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抄録

竪穴住居址の出入口は,家族空間への出入口であると同時に集落という社会空間への出入口である。しかし縄文時代の集落研究にとって重要な竪穴住居址の戸口の方位とその決定要因については明らかにされていない。
本研究では,岩手県域145遺跡の竪穴住居址697棟の前庭部を対象に開口方向を計測し竪穴住居址の戸口の方位を明らかにした。河川水系ごとに竪穴住居址の戸口の方位と最近30年間(1977~2006年)のアメダス観測点の冬季と夏季の卓越風向の観測値を比較分析した。
その結果,竪穴住居址の戸口は,谷の軸を考慮して風雪の影響が強い冬季の卓越風向を避け,東から南を経て南西の方位を指向する傾向が認められた。地形との関係では,戸口の方位を谷側に向けることで,雨水が竪穴住居内に流入するのを防いだと考えられる。気候との関係では,戸口から竪穴住居内への日照の確保をするとともに,冬季の吹雪による影響を避ける方位を選択していたものと考えられる。

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© 2016 東北地理学会
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