季刊地理学
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研究ノート
北海道東川町におけるブロードバンド整備事業の展開
佐竹 泰和荒井 良雄
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2017 年 68 巻 4 号 p. 284-301

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抄録

2000年代に入り,インターネットの高速通信を可能とした新たな通信基盤として,ブロードバンドが急速に普及している。ブロードバンドには様々な技術があるが,日本で広く普及しているADSLは,技術的制約から広大な平野部のような地域に対するブロードバンドの提供には適さない。本研究では,こうした地域におけるブロードバンドの整備事例として,北海道東川町を対象に,住民へのアンケート調査を通じて光回線の需要を明らかにした。

アンケート調査からは ① 光回線はADSLの利用が困難である地区で顕著な需要がある,② 光回線とADSL等の他のブロードバンド利用目的はほぼ同じであるという結果が得られた。これらの結果から,光回線整備によって,これまでブロードバンドが利用できなかった地区でも,他地区の住民と同様にブロードバンドが利用できるようになったと指摘できる。しかし,ADSLが利用できず光回線の整備が求められた地区は,人口密度が低く採算性が悪いことから,単独のサービス事業体で通信基盤を維持するのは厳しい。この課題に対しては,電話サービスで義務付けられているユニバーサルサービス制度のように,個々の事業体を超えて相互補助が可能な制度が求められる。

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© 2017 東北地理学会
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