季刊地理学
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論説
近代工業勃興期の中国の食料海外依存
── 『中國各通商口岸對各國進出口貿易統計』からみた1920年代の食料貿易 ──
荒木 一視
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2019 年 71 巻 2 号 p. 53-73

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抄録

近代工業勃興期にある1920年代の中国の食料の海外依存を検討した。その背景には,増加する鉱工業労働者への食料供給をどのようにして担ったのかという問題意識がある。当時の中国の穀物生産は拡大していないものの,鉱工業労働者は大きな増加を見るからであり,輸入穀物によってそれを賄ったのではないかと考えた。そこで中国の北京大学図書館で閲覧した『中國各通商口岸對各國進出口貿易統計』によって当時の食料貿易を把握した。期間を通じて上海を中心とした中部の港では欧米からの輸入拡大が認められた。従来それは中国の工業化に伴う工業原料の輸入とみられていたが,食料貿易も大きなシェアを持っていたことが明らかになった。特に小麦,米,小麦粉などの穀物の輸入がその主力であった。小麦においてはオーストラリアをはじめとしてアメリカ合衆国やカナダ,米においては香港をはじめとして英領インドやフランス領インドシナなどアジアからの輸入が中心であった。このように,20世紀初めの中国の近代工業化の一翼を支えたのは海外からの食料供給であったといえる。同時にそれは今日経済成長を遂げる中国とその食料の海外依存という文脈にも当てはまる。

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