東北地理
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分布よりみたる日本の機械工業
板倉 勝高
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1961 年 13 巻 1 号 p. 1-16

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抄録
日本の機械工場は工場数、工員数、付加価値生産額の大部分が中央地帯に集り、その他の地域にあるものは鉱山、軍事起源のものを除けば小規模である。その成立は1914年以前は鉱山、繊維工業、軍事、漁港の起源が多く、先行産業や特別な要求によつて特定の地域に成立している。1930年になつてからは、独占的大企業の系列に属する工場、電機工場、独占的商品を生産する工場などで地域の特定性に乏しい。
京浜、中京、阪神を含む中央地帯は交通量大なるため系列協力工場の便を得やすく、完成品組立の大工場を中心に多くの工場が結合している。これらの協力工場は主なる親工場以外の工場とも迅速な取引ができる地域に所在することを条件としているので協力工場を通じて、親工場同士が相互依存しているとみなすことができる。
中央地帯への工場集積の不利益をさけるために地方地区に成立したものは、労働力の質が悪いので精度のごく高い製品は期待できない。従つて軽量簡量な電気部品や構造簡単な独占製品を生産するものが多い。
中央地帯では耐久消費財生産の拡大にともない、加速度的に工場集積が行われており、地方地区にも新な工業投資が行われつつあるが、その率は相対的には中央地帯よりも低い。しかし中央地帯の完成品工場も地方地域の低い労働力によつて作られた粗雑な部品を組み立てているかぎり、全体的に良質高度の製品を生産することはできず、高級精密な工作機械などは輸入にまたなければならない現状がたやすく売服されるとは思われない。
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