東北地理
Online ISSN : 1884-1244
Print ISSN : 0387-2777
ISSN-L : 0387-2777
アメリカ合衆国ワシントン州における日本人移民の分布の変化, 1890-1940
大城 謙治
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 25 巻 4 号 p. 190-200

詳細
抄録
ワシントン州の日本人移民の分布は, 1910年までの初期時代, 1921年までの第2期, 1930年までの第3期, 1940年までの第4期で, それぞれ特徴ある分布状態を示している.
初期には中国人移民の後を受けた季節によって移動する労働者であった. それは日本人移民が英語を使えなかったこと, 教育程度が低かったこと, および人種・宗教・言語・習慣などの社会的問題や地域の経済構造などから由来する, 雇傭の機会の制限によってである. すなわち, 冬季にはシァトル周辺でのサケ罐詰工揚の労働者とスポケーン周辺の鉄道建設の人夫と夏季にコロンビア川の谷やヤキマ平原の農場の労働者として渡り歩く状態であった. 丁度その頃は, ワシントン州の農業が確立し, 生産物を東部の市場に輸送するため鉄道建設が盛んだった時期にあたる. そして1906年から移民制限が行なわれ, 男子移民の増加が止まり, 女子移民が増加するようになって, 初期時代は終了する.
第2期には, 鉄道建設の労働者としての職場はヨーロッパ移民によって占められ, 小作農として農業に多くの移民が定着し, 生活程度も次第に向上しだした. しかし小作農の著しい増加の結果1921年に小作の継続を不可能とする法律の制定となる. そして農業からしめ出された移民は都市において職業を求めざるを得なくなる. 一方, 女子移民は最初から都市での低賃金の家事使用入や食堂や会社の掃除婦などの職についていた. この都市への移民の定着が第3期にあたる.
著者関連情報
© 東北地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top