東北地理
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八ヶ岳連峰の森林限界
特に地形との対応関係について
田中 艸太郎
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1986 年 38 巻 3 号 p. 167-179

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抄録

本州中部八ヶ岳連峰の森林限界について調査を行なった。八ヶ岳における森林限界は, 多くの場合亜高山性針葉樹林帯の上限付近に発達するダケカンバ林 (高木ないし亜高木) とハイマツ低木林の境界として存在する。全体としてみれば, これらの植生は垂直的な帯状分布をなし, 森林限界は標高2,500~2,650mに位置する。このような垂直分布から見れば, 森林限界が形成される要因は, 高度による温度条件の差が第一義的であると考えられる。
しかし, 森林限界付近においてダケカンバ林とハイマツ低木林の分布は, 谷すじや尾根といった地形との対応関係が深い。そのため森林限界の位置も高度的に変化することが認められる。本研究では, 地形と森林限界を構成する植生の分布との関係を明らかにした。その結果次のことがわかった。
1) 森林限界付近においてダケカンバ林は, 比較的積雪の多い谷すじの斜面や, 急傾斜地に分布する。2) それに対し, ハイマツ低木林は, 比較的風衝の強い尾根上や, 乾性な岩塊斜面に分布する。3) そのため, 森林限界の位置は, 尾根上よりも谷すじの斜面で高くなる。また冬期の卓越風に面する西向きの斜面よりも東向きの斜面での森林限界が高い。その高度差は100mにもおよぶ。

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