東北地理
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南房総地域における常緑および夏緑広葉二次林の分布とその成立要因
磯谷 達宏
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1989 年 41 巻 4 号 p. 225-242

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抄録

南房総地域は, 太平洋側における常緑広葉二次林の優占域の北限にあたり, ここでは常緑広葉二次林のほか, おもに夏緑広葉二次林が分布している。本稿は, このような地域を研究対象として, 中気候のスケールに相当するメソスケールの広がりにおいて, 常緑および夏緑広葉二次林の分布にみられる地域性とその成立要因とを明らかにしようとしたものである。その結果, 常緑・夏緑広葉二次林の分布には, メソスケールの広がりにおいて顕著な地域分化が成立していることがわかった。すなわち, 常緑広葉二次林が太平洋沿岸域で優占しているのに対して, 夏緑広葉二次林はおもに内陸域で優占している。このような地域分化の成立要因について, 分布対応の側面および生態的な側面から検討した結果, 問題とする地域分化は, おもに冬芽季 (11月~4月) の積算的な気温条件によって規定されていることがわかった。なお,「明治初期の時点で草地的土地利用が営まれていた地域では, 当時から樹林が成立していた地域と比べて, 今日, 夏緑広葉二次林の出現頻度が高い」という現象が, それぞれの二次林の優占域間の移行帯内においてとくに顕著に成立している。このように, かなり強度な人為的要因との分布対応が, メソスケールにおける移行帯の内部において特徴的にみられるということも, 問題とする二次林植生の地域分化が人為以外の要因すなわち自然的要因によって規定されていることを裏付けている。

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