季刊地理学
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大雪山における湿原の成立
高橋 伸幸
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1992 年 44 巻 1 号 p. 1-17

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抄録
大雪山地域には, 高山帯を中心に多数の湿原が分布している。湿原の形成開始時期は, 約7,500y. B. P. にまで遡れるものもあるが, その発達が特に顕著になるのは。気候が冷涼化する約5,000y. B. P. 以降である。この冷涼化の結果, 特に高山帯では残雪量の増大が推定され, それに伴うハイマツ群落の縮小及び涵養水の供給増が湿原拡大に大きく寄与したと考えられる。このような気候条件の下で湿原分布を決定した要因は, 湛水条件や集水条件を支配する地表面の状態である。森林限界以下では, 火山活動や地すべりによる森林破壊と凹地の形成により湿原成立の空間と湛水条件が準備された。一方, 森林限界以上では, 周氷河作用によるソリフラクションローブや階状土の形成の結果, 緩斜面上に微少な凹凸が出現し, 湛水条件が整えられた。このような立地条件に加えて, 残雪凹地や永久凍土の存在あるいは集水域の大きいことは, 十分な涵養水供給を可能にし, 湿原形成にとって好条件を提供した。
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