季刊地理学
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イギリスにおける日系自動車企業の立地展開
友澤 和夫
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1994 年 46 巻 2 号 p. 85-106

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抄録

1980年代中頃以降, ECの中ではイギリスにおいて日系自動車工場の立地が進展した。本稿は, それらの立地過程と生産の現状を捉え, 現地に構築した生産体制や労働力編成を明らかにすることを目的とした。イギリスへの進出は, 政府の政策, 低賃金性, 文化的特性等に加えて, 既存のメーカーがヨーロッパ事業を再編成する中で, 同国の生産拠点としての地位が低下した結果, 自動車産業が衰退・停滞状態にあったことを背景とする。これによって, 日系企業が進出する政治的・経済的な条件が形成された。立地地点の決定は, 取得可能な用地面積規模によって, 限られた候補地の中から行われた。日系3工場は, 各々百数十社の部品サプライヤーと取引を行っている。それらは, 品質, 価格, 安定性, 納期等を基準にEC内から選定された。国内のサプライヤーは, JIT方式による部品配送を行っている。工場立地は大きな雇用機会を地元にもたらしたが, 実際には日本的な労働慣行に適応しやすい若年層主体の採用であった。他方, 生産機能に留まらず, 研究開発機能の設立や, 販売体制の強化も進められている。

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