季刊地理学
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東北地方における果樹栽培地域の気候環境について
青山 高義長谷川 典夫柳瀬 訓
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1998 年 50 巻 2 号 p. 139-153

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抄録

東北地方の果樹栽培地域の気候条件を, ソーンスウェイトの方法による可能蒸発散量, 水不足量, 水過剰量を用いて検討した。対象とした果樹は, 温帯性落葉果樹であるリンゴ, ブドウ, モモ, カキである。
東北地方の果樹栽培地域には, 福島盆地, 山形盆地, 津軽平野南部などの他, 馬淵川中・上流域, 北上川中流域, 横手盆地などがある。これらの地域は, いずれも相対的に可能蒸発散量と水不足量が大きい地域となっており, 乾燥して温度的にも恵まれた地域である。
全国的に裁培されている北部温帯果樹のリンゴと中部温帯果樹のブドウについて, 主産地における単位面積当たり収量と可能蒸発散量の関係から, それぞれの果樹のポテンシャル収量を明らかにした。最も収量が多くなる可能蒸発散量は, リンゴは約680mm, ブドウは約780mmで, 100mmの違いが認められる。地域的に見た場合, 単位面積当たり収量が最も多くなるのは, リンゴは山形県, ブドウは山梨県である。
山形県を例として果樹の収量と可能蒸発散量および4月~9月の水過剰量の関係を求めた。ポテンシャル収量は, いずれも可能蒸発散量が680mm~690mmで水過剰量が小さな, 乾燥した条件下で最も多くなる。ポテンシャル収量が最大となる4月~9月の水過剰量は, 果樹によって異なり, リンゴは177mm, カキは95mm, ブドウは29mm, モモは6mmと, リンゴが最も湿潤な条件に, モモが最も乾燥した条件に適応している。水過剰量がこれより大きく湿潤な場合には, いずれも収量の減少が著しいことが明らかになった。

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