抄録
本稿は, 1901年に中国貿易を扱い得るビジネスマンの養成を目的として上海に開設された東亜同文書院の学生達が1907年から1942年にかけて行った中国調査旅行の実態を明らかにし, 彼らが記録した調査報告書および日誌の資料的価値について説明した。書院生の旅行コースは全体で700コースに及び, 中国全土をカバーするとともに, 調査テーマも中国社会を知る上でバランスのとれた内容であった。調査報告書は日本人の手になる初の本格的中国地方誌であった『支那省別全誌』(18巻) および『新編支那省別全誌』(18巻刊行計画中9巻まで刊行) に最大限に活用された。日誌は状況証拠として間接的に利用された程度であった。しかし, 日誌は清末から民国期の混乱期に, 中国全域をとらえる研究が空白になった部分を埋めることができる貴重な資料である。