季刊地理学
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北海道アイヌ語地名に見られる人々と自然環境との関わり
河川・崖の地名を例として
小木 亜紀子菊地 真古谷 尊彦
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キーワード: 地名, 北海道, アイヌ語
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1999 年 51 巻 2 号 p. 103-113

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抄録

北海道のアイヌ語地名について, 自然地理的分類を行い, 地名に表現される自然環境と, アイヌの人々との関わり合いについて考察することを目的とした。
地名は, 崖・絶壁・崩壊に関する地名, 河川・澤の地名, 湿地・平地に関する地名, それらの修飾語である。これらの地名は約2,900ほどであり, そのうち河川・澤の地名は約2,300と総数の大半を占める。
河川の地名分布は, 知床から室蘭にかけての海岸沿いの地域でpet地名が多く見られ, これは千島からの言葉の影響と考えられる。道北ではnay地名の多い地域があるが, 樺太からの影響として見るまでには至らない。渡島半島では, pet, nay地名があまり見られず, 本州からの大和言葉の影響と思われる。また十勝川, 天塩川における地名分布の事例は, pet, nay地名の多様なあり方を示している。
抽出した全ての地名は, 語幹と修飾語に分けられ, 語幹は共通した環境を表し, それに特徴的な修飾語が組み合わされることによって, 地点地名表示となっている。
これらは, アイヌの人々の自然と深く関わったライフスタイルを色濃く反映したものと考えられ, 北海道のアイヌ語地名と自然環境の関係について, より一層明らかにする必要がある。

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