季刊地理学
Online ISSN : 1884-1252
Print ISSN : 0916-7889
ISSN-L : 0916-7889
山形都市圏における宅地開発の展開とその諸特徴
千葉 昭彦
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 52 巻 2 号 p. 99-117

詳細
抄録

本研究の課題は人口30万人をこす山形都市圏での宅地開発の展開過程を概観し, そこでの諸特徴を明らかにしたうえで, 同じく人口30万人をこす類似規模の都市圏でみられた宅地開発の諸特徴との比較を試みることである。
山形都市圏の戦後の宅地開発は1960年代, すなわち高度経済成長期中期から本格化し, そのほとんどが組合施行による土地区画整理事業によって担われている。その後高度経済成長期後に一時公的主体や民間開発業者による宅地開発も活発化したが, それらが都市圏の中で積極的な役割を果たすことはなかった。その後も山形都市圏の宅地開発は土地区画整理事業が開発主体の圧倒的多数を占めている。
これらの宅地開発の特徴としては, 既成市街地周辺を対象地とし, 開発規模は小さく, 開発地内での諸施設整備は充分とは言えず, 開発地外に立地する諸施設の利用がその開発地での住民生活の前提条件となっていることが多い。また, これらの開発地では, 個性化の進展もほとんどみられない。他の人口30万人をこす都市圏ではこのような特徴をもつ宅地開発の他に, これとはほぼ逆の特徴をもつ宅地開発が主として公的主体と一部の民間開発業者によって担われている。山形都市圏では公的主体や民間開発業者による宅地開発が重要な役割を担っていないため, 後者のような特徴をもった宅地開発はみられず, 前者のような特徴のみがみられることとなっている。また, 1980年代中頃から全国各地で民間開発業者等が参入した組合施行による区画整理事業によって開発地の個性化を推進する事例が数多くみられているが, 山形都市圏においてはそのような事例はみられない。

著者関連情報
© 東北地理学会
次の記事
feedback
Top