季刊地理学
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エスニック都市空間の再開発過程と建造環境の変容
シアトルの「インターナショナル地区」を事例として
杉浦 直
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2001 年 53 巻 3 号 p. 139-159

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抄録
本研究は, シアトルにおける複合アジア系エスニック都市空間「インターナショナル地区 (ID)」を取り上げ, そこで働いている都市過程, 特に再開発事業の性格と経緯をみるとともに,「建造環境」という概念を取り入れてこの地区の特性とその変容を分析・検討するものである。IDは, 1970年代からの再開発過程において, その建造環境をかなり変容させたが, 現在 (1990年代) なお, 1) 建物の過半が古い建物であり, 修復工事においても外観が極力保存されてきたこと, 2) 域内営業施設の8割以上が小規模店舗を主としたアジア系のエスニック・ビジネスとみられること, 3) 高齢化したとは言え, ある程度のアジア系コミュニティを残していることなどの諸点において, エスニック都市空間としての伝統的特性を存続させてきた。その主要な背景は, 建造環境を再生産していく再開発過程が, 低所得者・高齢者の住宅確保と小規模エスニック・ビジネスの再活性化を基本的な目的としてコミュニティ・ベースでゆっくりと進められ, 大規模な建造環境のクリアランスが生じなかったことにある。しかし, 1990年代後半になって非コミュニティ・ベースの資本主導による一般的都市過程もようやく活発になりつつあり, 商業・業務・居住空間としての地区の性格が変容していくことが予想される。
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