季刊地理学
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大都市圏の地価上昇と空間変容の相互作用
山田 浩久
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2002 年 54 巻 4 号 p. 236-246

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抄録

1970年代後半の地価上昇は, 第一次石油ショック後の景気低迷期における金利の引き下げと土地市場の特異性によって生じた。しかし, 恒常的な住宅地地価の上昇に所得上昇が追いつかなくなった大都市圏住民の増加と圏域の空間的拡大スピードの鈍化によって住宅地市場は縮小し, 地価上昇は沈静化に向かった。その結果, 住宅地市場から撤退した住宅購入希望者が大都市圏内部に滞留することになり, マンション開発が活発化した。マンション開発業者による土地買収は, 都心および都心周辺部の土地需要を大幅に増大させ, 既成市街地の再開発や用途混在型の土地利用を加速させる主要因となった。
マンション開発がもたらしたこれらの現象は投機的土地取引や地価上昇の空間的波及を助長する作用がある。1980年代後半の地価急騰は東京都心部における商業地地価の局地的上昇を発端とする波及型の地価変動現象と特徴づけられるが, マンション開発が惹起した都市空間の変容がその背景にあったと考えられる。

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