Thermal Medicine
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力源とずり弾性率の再構成
炭 親良末包 明夏
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2009 年 25 巻 4 号 p. 89-103

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抄録

これまでに, 著者らにより, 肝や乳房等のヒトin vivo軟組織の癌病変の鑑別診断を実現するべく, 組織内の歪計測に基づく様々なずり弾性率再構成法が開発されている. 組織内歪は超音波や核磁気共鳴イメージングに基づいて計測される. また, ずり弾性率再構成は, 加熱治療の治療効果として, 組織変性や組織凝固を捉えることにも応用されている. 本稿では, 以前に著者らにより開発されたずり弾性率再構成法が, 関心領域内に存在する静的または動的な圧や力ベクトルなどの任意の力源をずり弾性率と共に再構成できる方法に拡張されている. 元のずり弾性率再構成法では, 力源が関心領域の外に存在する場合においてのみずり弾性率の再構成を可能とするものであった. 本稿では, この力源をずり弾性率以外の慣性や平均垂直応力などと一つにして再構成することも提案されている. ずり弾性率の再構成そのものを目的とした場合には, これにより計算時間が格段に短縮される利点がある. さらに, 本稿では, シミュレーションにより, これらの拡張された再構成方法が強力焦点超音波 (high intensity focus ultrasound : HIFU, 治療だけでなく組織を変形させるためにも使用される) や静的コンプレッサー, バイブレーター, 心臓の動きや脈などの力源をずり弾性率と共に再構成できる潜在能力を有することが確認された. これらの再構成法の拡張により, 深部組織を対象とすることが容易になり, また, 治療実施 (治療超音波放射) 時のイメージングが可能になるなど, ずり弾性率再構成の応用範囲が広範化されるであろう. また, 力源が再構成されることにより, 心臓などの動的やその他静的な組織の培養を含めてactivityを細胞レベルで評価することが可能となり, また, 超音波ビームフォーマーをデザインするためやHIFU治療や組織変形を制御するための点拡がり関数などの評価が可能となろう.

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© 2009 日本ハイパーサーミア学会
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