Thermal Medicine
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がんの進行とp53の活性におけるHeat Shock Protein 40/Jドメインタンパク質の影響
戒田 篤志岩熊 智雄
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2022 年 38 巻 2 号 p. 33-50

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抄録

がん抑制因子p53は,ヒトのがんにおいて変異の発生頻度の最も高い遺伝子である.大部分の変異はミスセンス変異であり,それにより発現する変異型p53タンパク質は,本来のがん抑制因子としての機能を喪失するのみならず,がんの進行を促進する働きを新たに獲得することから,“機能獲得変異(gain of function: GOF)”と呼ばれている.野生型p53および変異型p53が,各々がん抑制的または促進的に機能するためには,その安定化や蓄積が重要であるが,その制御機構については未だ不明な点が多い.熱ショックタンパク質(HSPs)は分子シャペロンの一つであり,タンパク質の折りたたみや輸送,変性タンパク質の安定化や分解など多彩な機能を有している.中でもHSP40は,50種類以上のメンバーを有しHSPでは最大のファミリーである.HSP40ファミリーはJドメインと呼ばれる高度に保存された構造を有することから,またの名をJドメインタンパク質(JDPs)とも呼ばれる.HSP40はJドメインを介してHSP70と結合し,HSP70のATPase活性を刺激する補助因子(コシャペロン)として機能する.しかし,最近の研究では,HSP40/JDPsがp53の発現または活性制御にも関与することが明らかになってきている.そこで本総説では,我々が明らかにしたDNAJA1による変異型p53の安定化を介したがん転移促進機構について紹介するとともに,過去の文献を基に,HSP40/JDPsによるp53の発現と活性の制御について総括したい.

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© © 2022, 日本ハイパーサーミア学会
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