1998 年 14 巻 2 号 p. 125-129
ベンツアルデヒド (BA) を僅かな致死毒性を示す1.8mMで処理する事により42℃の緩徐な温熱致死感受性を著しく増感した。BAの前駆体ベンヂリデングルコピラノース (BG) はin viroでは酵素的に、in vitroでは強酸性下に加水分解されてBAとなるが、BG自体には温熱増感作用はない。いづれも揮発性、難水溶性である。BGの更に前駆体はアミグダリンでアーモンドやアプリコット等の種子に含まれる青酸配糖体で、これを二段階加水分解すればBAとなる。BAは250nmの波長で特異的吸光を示す。BGはpH3の塩酸々性下に37℃、22時間インクベートした後、NaOHで中和すると最初のBG濃度 (1.8mM) の半分がBAに加水分解されており、等モル (1.8mM) のBAに比較すればこれを下廻るが、強酸処理されてBAに変化した画分が相当の温熱増感効果を示す。しかしBGそれ自体は何等の温熱増感効果も示さないので、BA或いは、その適切な誘導体による温熱致死効果の増感は温熱癌治療の将来の手法の一つとなるかもしれない。