日本ハイパーサーミア学会誌
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難治性頭頸部腫瘍に対する局所温熱治療成績の臨床的検討
増永 慎一郎平岡 真寛西村 恭昌光森 通英芥田 敬三永田 靖小石 元紹徐 志堅高橋 正治阿部 光幸
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1993 年 9 巻 2 号 p. 104-114

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抄録
1979年10月より1991年12月に京都大学医学部附属病院放射線科で温熱治療を施行した頸部リンパ節転移症例を除く難治性頭頸部腫瘍39例, 37疾患を対象とした. 新鮮症例18例 (このうち17例がStageIII~IVの進行性腫瘍), 再発例21例であり, 何れも通常の治療では制御困難と考えられたいわゆる難治性腫瘍である. 原発巣は, 頬粘膜癌9例, 唾液腺癌7例 (うち耳下腺癌6例), 歯肉癌4例が多く, 組織型では, 扁平上皮癌19例, 悪性黒色腫瘍6例, 腺癌6例が含まれている. 加温は, 13. 56MHz (8例) または8MHz (21例) RF 誘電加温装置, あるいは2450MHz (7例) または430MHz (3例) マイクロ波加温装置を用い, 35例には9~80Gy (TDF : 49~132) の放射線照射を, 2例には化学療法を併用し, 残る2例には温熱単独療法が行われた. 温度分布は腫瘍体積の大きな症例程良い傾向を認めたが, 加温装置の違いによる差は認められず, 一次効果との関連も明らかではなかった. 一次効果は, CR 8例 (21%), PR 22例 (56%), NR 9例 (23%) で奏効率 (= (CR+PR) 率) 30/39 (77%) が得られた. 放射線治療非併用症例, 放射線治療併用例では照射線量の少ない症例, 照射後再発症例の一次効果が不良であったが, 新鮮症例と再発症例との間には一次効果の大きな差を認めなかった. 一次効果の良いほど, 局所制御率も良好であったが, 一次効果でPR やNR であっても再発の前に救済手術で局所病巣を切除した症例には局所制御されたものが多く, 生存率 (cause specific survival) も一次効果の良い程, 良好であった. 進行性及び再発性の難治性頭頸部腫瘍に対して集学的治療法の一つとして温熱治療を採用する事によって, 腫瘍効果を高め, さらには生存率も改善し得る可能性があると考えられた.
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