THINK Lobbyジャーナル
Online ISSN : 2758-6162
Print ISSN : 2758-593X
調査報告
複合危機下の国際協力途上国の債務問題と市民社会の役割
内田 聖子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 2 巻 p. 41-47

詳細
Abstract

The world is facing multiple crises, including COVID-19 pandemic, the war in Ukraine, and high prices and energy insecurity. Against this backdrop, the external debt of developing countries is increasing. The debt problem, which has persisted since the 1980s, cannot now be resolved through traditional restructuring negotiations due to the diversification of lenders. This article presents the current situation of debt problems in developing countries, the responses of countries and international institutions, and the recommendations by international civil society.

Ⅰ.複合危機の中で増加する途上国の債務

2019年末からの新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック、それに続くロシア・ウクライナ戦争によって、これまで以上に世界経済の先行きが見通せなくなっている。それ以前からグローバルな課題として存在する気候危機も加えれば、まさに世界は「複合的な危機」の中にある。

食糧およびエネルギーのショックは、社会全体の不平等を増幅させてきた。途上国では、数十年にわたる貧困削減と開発の成果が複数の危機によって覆され、金利の上昇、成長の鈍化、不十分な債務救済・再編、不公平なグローバル税制、資金へのアクセスの制限などが要因となり、回復は足踏み状態だ。

1980年代以降の金融や貿易などのグローバル化によって、今や世界経済は多くの国が複雑に分かちがたく結びついている。途上国・新興国1)(低・中所得国)が直面する財政難や開発資金の不足といった厳しい状況は、長年の国際経済体制が生み出してきたものであり、また私たち日本の市民社会とも無関係ではない。こうした視点から、本稿では途上国・新興国における債務問題の現状と各国および国際機関の対応、さらに国際市民社会としての提言を紹介する。

図1は、各新興・発展途上地域の対外債務残高と同名目GDP比を示したものである。2022年末の低・中所得国の対外債務残高は約11兆9,000億ドル(1,606.5兆円)であり、2000年末の2兆4,000億ドルの約5倍、2010年末の約6兆ドルからも倍増している。まさにこの20年間で途上国・新興国の債務は急速に膨らみ続けてきたのである。新型コロナのパンデミック下での医療関連、景気対策関連の支出拡大や、エネルギー・食料価格上昇への対応策が政府債務そして対外債務を急増させた。さらに、物価高騰への対応として2022年3月に始まった米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げは、ドル建ての対外債務を多く抱える途上国に大きな打撃となった。金利上昇が利払い負担を増加させる一方、FRBの利上げによって進んだドル高は、自国通貨に換算したドル建て対外債務を大きく膨らませた。

図1:途上国・新興国の対外債務

出典:経済産業省「通商白書2023」 https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i1140000.html(2023年11月20日閲覧)

Ⅱ.1980~1990年代の債務問題と国際市民社会の運動

途上国の債務問題は、決して新しい問題ではない。1970年代以降、開発援助を必要としていた中南米やアジア、アフリカ諸国にIMF・世界銀行などから多くの融資がなされた。一方、多くの途上国は植民地時代から続く、コーヒーやカカオ等の一次産品の輸出収益に依存したモノカルチャー経済を運営していた。だが国家主導によるモノカルチャー経済の運営は、一次産品の国際価格の下落とともに破綻し、1980年代には債務返済ができない途上国が続出し、債務問題は一気に深刻化した。これに対し、IMF・世銀は新たな融資の枠組みとして「構造調整プログラム(SAP:Structual Adjustment Program)」を開始する。IMF・世銀が援助国政府の政策決定に大きく介入することを条件に、実施する開発援助である。ここで融資の条件として途上国に課されたのは、為替レートや金利、貿易の自由化、公共サービスの民営化、規制緩和、公共支出改革、税制改革など一連のパッケージであった。構造調整プログラムによって公的な支出は抑制され、自由化や市場開放が進むことで市場主導の経済成長が促されることが当初は期待された。これによって債務返済が可能となった途上国もある一方、財政構造も脆弱で教育や保健医療などの公共サービスも十分でなく、さらに汚職も頻発する途上国にあっては、構造調整プログラムは有効に機能しないばかりか、逆に公共サービスにアクセスできず貧困化する人々が急増したり、社会サービスの低下による就学率の低下やHIV/エイズ、マラリアなどの感染症が蔓延していったケースもある。

こうして途上国の債務問題は90年代に入っても課題として残った。1996年、IMF・世銀は、貧困国が制御不能な債務負担に陥ることがないよう、重債務貧困国(HIPC)に対するイニシアティブ2)を立ち上げた。重債務貧困国とは、世界で最も貧しく最も重い債務を負っている途上国を指し、①1993年の1人あたりのGNPが695ドル以下、②1993時点における現在価値での債務残高が、年間輸出額の2.2倍もしくはGNPの80%以上、という基準で認定された。96年の時点で、世界で40カ国が重債務貧困国とされたが、そのうちサブ・サハラ・アフリカに33カ国が集中していた。一方、国際市民社会は、80年代以降も解決しない債務問題に対し、国際機関や先進国の貸し手の責任を問い、債務を帳消しにする国際キャンペーン「ジュビリー2000」を1990年に立ち上げた。重債務貧困国を多く抱えるアフリカの「全アフリカ・キリスト教会協議会」の呼びかけにより始まった国際運動で、イギリスに拠点が置かれた。主にキリスト教会のチャンネルを通してヨーロッパや米国などを中心に多くの国に広められ、債務に苦しむ途上国の状況を広く訴えた。ここには労働組合、NGOなども加わり、さらに著名なミュージシャンや文化人も賛同に名を連ねた。1998年にイギリス・バーミンガムで開催されたG8サミット時には、ジュビリー2000の呼びかけにより7万人が人間の鎖を作り会場を囲んだ。以降、同キャンペーンはG8サミット(ケルン、沖縄、ジェノバ)の場で債務問題をアジェンダにし、債務帳消しを先進国・国際機関に求めてきた。日本ではアジア太平洋資料センター(PARC)もこのキャンペーンに参画し、日本政府への働きかけや市民向けのアクションを行ってきた。

こうした努力の結果、一部の債務が帳消しあるいは返済猶予されるなど一定の成果を上げることができた。例えば1999年のG7ケルン・サミットでの首脳宣言にて「ケルン債務イニシアティブ」3)が合意され、重債務貧困国の債務救済強化がされることになる。もちろん、市民社会が求めた債務帳消しは完全な形で実現したわけではなく、途上国の債務問題はこれ以降も大きな課題となり続けた。

Ⅲ.複雑化する債務問題

それから約20年余りが経った現在、途上国の債務問題はさらに複雑化し、そして先述の通り債務額は増加し、借り手国の財政を大きく圧迫している。その大きな特徴は、貸し手の多様化である。主要な債権国政府が集まり、債務危機に直面した債務国の救済措置について協議する会合として「パリクラブ」が存在する。日本や韓国、カナダ、米国、フランス、ドイツ、英国など22ヵ国がそのメンバーだ。従来の債務の主要な貸し手はIMFおよびパリクラブであったが、この20年で中国による債務の比重が高まった。90年代以降、中国経済は拡大し、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟などを経てさらに発展してきた。中国はその膨大な外貨準備を活用し、債務返済に苦しむ貧困国を救済する緊急資金の供給源としての地位を確立してきた。また2013年に打ち出された「一帯一路構想」では、世界各地のインフラやその他のプロジェクトに融資を行ったこともあり、中国は一気に「貸し手」の側に変化した。先進国の援助や国際金融機関からの融資額が伸び悩む中で、民間部門(企業)による貸し付けも増加した。図2は、途上国・新興国の対外債務に占めるパリクラブメンバーからの借入割合を示したものであるが、大半の国でパリクラブメンバーからの借入割合は半分に満たないことがわかる。つまり、パリクラブ内での債務削減や再編の議論をしているだけでは、途上国の債務問題はまったく解決しないといえよう。

図2:各国の対外債務に占めるパリクラブメンバーからの借入割合(2021年)

出典:経済産業省「通商白書2023」 https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i1140000.html(2023年11月20日閲覧)

Ⅳ.G7、G20、IMF・世銀などの取り組み

IMFによれば、2023年8月末時点で世界の低所得国70ヵ国のうち、14%にあたる10ヵ国が過剰債務に陥っていて、37%にあたる26ヵ国が過剰債務に陥るリスクが高い4)。こうした状況を受け、IMF・世界銀行やパリクラブのメンバー国、またG7やG20なども手をこまねいているわけではない。この数年、途上国の債務をいかに再編していくか、すなわち貸し手と借り手の間での債務再編に向けた調整の必要性が多くの場で議論されてきている。

例えば、2020年4月、G20及びパリクラブは2020年末までの途上国の債務について支払猶予に合意した。また同年10月に支払猶予期間の6か月間延長(~2021年6月末)、2021年4月にさらに6か月間の最後の延長(~2021年12月末)に合意した。これは債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)5)と言われる。

Ⅴ.債務支払猶予イニシアティブ

また2020年11月、G20はDSSIの終了後を見越し、ケースバイケースで低所得国向けの債務救済を行うための「共通枠組」6)を承認した(パリクラブでも承認)。中国を含む非パリクラブ国が、債務救済をパリクラブと共通の枠組に従って合同で行うことを初めて約束したものだ。債務問題の解決に向けては、主要な貸し手となった中国の「共通枠組」への参加が不可欠であり、G20前から米国が参加を働きかけてきた。「共通枠組」は、すべてのG20及びパリクラブの債権者と参加意思のある他の公的な二国間債権者は、債務措置の主要条件を合同で確定し、①名目債務支払額の変更、②割引現在価値での債務削減、③償還期間の延長、等の形での措置を実施することになっている。

共通枠組が承認された後、チャド、エチオピア、ザンビアの3ヵ国が「共通枠組」の下での債務救済を要請した。また直近ではガーナが同枠組による債務救済を要請している。

しかしながら、これらのメカニズムも債務問題の解決に向けて完全なものではない。先述の通り債権国として存在感を増している中国は、「共通枠組」に参加はしたものの、概して債務減免に否定的である。各種報道から読み取れる範囲でいえば、返済期限の延長を認めつつも、つなぎ融資によって引き続き債務返済を途上国に求めている。例えば、パキスタンの債務問題では、先進国を中心とするパリクラブが経済改革の実施と引き換えに債務軽減をパキスタンに求める姿勢であるのに対し、主要債権国の中国はつなぎ融資で返済の継続を促す姿勢であり、債務再編策の合意ができない状況が続いている。

2023年4月のIMF・世銀の春季総会でも、途上国の債務問題は喫緊の課題としてあがったが、大きな進展はなかった。2023年10月にモロッコのマラケシュで開催されたIMF・世界銀行の年次総会では、デフォルト(債務不履行)に陥ったザンビアが債権国と債務再編で覚書に合意するなど一定の進展があったが、民間債権者との交渉が残るなど課題も残る。また多くの債務国に関して、中国や民間の債権者など債務再編に関わるさまざまなグループの間で協議が行われたが、先進国側、国際機関、そして中国の間での隔たりは大きく、「債務再編」と一言でいっても具体的には非常に複雑で個別の事情があるため、事態の打開につながる合意に達することはできなかった。

さらに2023年5月に行われた広島G7サミットでも、債務問題の位置付けは決して高いものだったとは言えない。G7首脳コミュニケ7)での経済課題のうち債務問題に関しては、債務データの透明性の向上に一定の進展があったものの、債務編成については「G20など他の枠組みを支持し、任せる」という主旨が首脳声明に記載されただけである。G7の経済課題の優先順位は「経済安全保障」であり、中国の台頭をいかに封じ込めるか、またウクライナ危機への対応などが前面に出た結果であると言える。また中国や民間債権者の協力と合意抜きでは債務問題の解決が困難であることを示してもいるだろう。

出典:「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)と債務問題の今後の展望」財務省発行『ファイナンス』2022年7月号 No.680

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202207/202207f.pdf(2023年10月30日閲覧)

Ⅵ.民間債権者の問題

低所得国々の多くが、開発のための追加資金創出の大きなニーズを抱えており、外部から資金を調達するために、ソブリン債8)の発行や新たな公的融資機関からの借り入れ、国外の民間債権者への依存度を高めざるを得なくなっている。ソブリン債と民間融資は金利が高くて支払期限が短いことが多く、債務の返済費用が増え、その管理が困難になる。

例えばザンビア、ラオス、モザンビークでは、中国からの債務に続き債権、すなわち民間から借りている金額が一定以上の比率となっている。債務再編の際のカギを握るのはこうした民間債権者だが、こうした新たな債権者を含んだ債権者間調整のメカニズムづくりから始めなければならない。

主要な民間債権者は、米資産運用会社ブラックロックやバンガードグループ、ドイツのアリアンツ、クレディスイスなど米国やEUに拠点を置く企業の場合がほとんどだ。

2022年12月31日時点で8兆5,900億ドルの資産を運用していたブラックロックは、2億2,000万ドル(約322億円)のザンビア政府債務を保有しているとして非難を浴びてきた。2023年8月、債務問題に取り組むNGOらは、ニューヨーク市にあるブラックロック本社の外に集まり、資産管理会社に対し、ザンビアのGDP 220億ドル(2021年時点)の約1パーセントを占めるザンビアの対外債務を帳消しにするよう要求した9)

2023年4月、国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ザンビアの債務負担について懸念を表明し、債務再編の遅れは国際法に基づく人権義務を果たす同国の能力を妨げる可能性があると強調した。人権専門家らは債務再編の遅れが続けば、経済発展と国民の生活水準が妨げられる可能性があると警告している10)。彼らは、この問題に対処し、権利に沿った回復を確実にするため、世界的に調整された多国間ソブリン債務メカニズムを求め、ザンビアの公式債権者委員会に対し、審議の期限を設定するよう要求した。G20の共通枠組に加え、このような民間債権者が債務削減や再編の交渉テーブルにつくことの重要性を改めて指摘しておきたい。

Ⅶ.市民社会にできること

このように解決への道がなかなか開けない中で、窮状に置かれたままになるのは途上国・新興国の人々である。債務返済のために教育費や社会保障費が減額されたり、本来開発に充てるべき資金が足りないという状況に多くの債務国が陥っている。国際市民社会は、2000年代の債務帳消しキャンペーン以降、各国において組織を継続あるいは再編し、今もこの課題に取り組んでいる。近年、先行きの見えない国際金融・経済情勢と債務問題の変容に応じて、公正で持続可能な財政運営をすべての国に保障するべく債務問題の解決を訴えている。

その主要な国際的なイニシアティブは、ジンバブエを拠点とする「債務と開発に関するアフリカ・フォーラム&ネットワーク(AFRODAD)」11)や、英国に拠点を置く「債務の正義」12)、米国に拠点を置く「ジュビリーUSA」13)、「債務と開発に関するアジアの民衆運動(APMDD)」14)などが担う。また債務問題に対しては、カトリック教会や宗教家も積極的に発言をしている。

広島G7サミットにて日本の市民社会団体が中心となり形成したC7(Civil7)の「公正な経済への移行」ワーキンググループでも、途上国の債務問題は最優先課題として位置付けられた。筆者はジュビリーUSAにて金融・債務問題を専門とするアルド・カリアリ氏とともにこのワーキンググループのコーディネーターを務めたが、ここでの債務問題に関する政策提言15)を引用しよう。

「途上国の債務レベルは50年来の高水準にあり、多くの国が債務危機に直面しています。金利の上昇と経済成長の鈍化の中で、債務国は、経済や社会の回復力を高めるために必要な投資を行うことはおろか、脆弱な保健・社会保護制度を守るための財政スペースも限られています。国際的な債務構造は解決策を提供するには不十分であり、G20共通枠組みのようなその場限りのイニシアティブでは、まだ債務救済を実現できていません。迅速で予測可能なルールベースの債務整理を促進する国際債務アーキテクチャがないため、借入国は債務問題への対処を先送りし、危機は債権者だけでなく国民も含めたすべての人に大きな犠牲を強いることになります」

その上で、ワーキンググループは具体的に以下の提言を行った。

●民間債権者が多国間債務再編合意を損なうことを防止する国家拘束力のある法律を実施する。

●必要な脆弱な途上国に対して、迅速かつ包括的な債務帳消しを支援する。

●自動停止を発動し、すべての債権者を含み、すべての低・中所得国がアクセスできる債務再編メカニズムを確立するために、国連で多国間交渉を開始し支援する。再編プロセスと十分な債務削減を促進するために、債権の透明性と債権者・債務者の説明責任を促進する。

●IMFの上乗せ金利(サーチャージ)を撤廃する16)

●債務契約に対するインセンティブを調整する気候災害やその他の外部ショックなどのリスクを公平に配分する。

特に、民間債権者に対し、債務再編の交渉につくことを義務づける立法は、民間債権者の多い米国や英国にて市民社会が強く推進している取り組みだ。「ニューヨーク納税者および国際債務危機保護法」17)という名の法律が、州議会に提起されている。民間債権者が保有する世界の債務の50%以上は、ニューヨーク州法に基づいて契約されている。そのため、同州法にて民間債権者が米国政府や他の政府、他の債権者と同じレベルで債務救済の取り組みに参加することを義務づければ、債務再編交渉も進むことを意図している。18)この法案はジュビリーUSAなどの市民団体をはじめ、弁護士や専門家も加わり、州議会で提案された。

債務問題については、借り手側である途上国政府の情報の不透明性やキャパシティ・ビルディングなどの課題もある。例えば、債務管理の業務は多岐にわたるが、途上国では財務担当局の職員数が不足しているため、債務の総額の把握すらままならないケースもある。日本政府は、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援の一環として、こうした国々の債務管理に関する人材育成やシステム構築の支援を行っているが19)、こうした形での国際協力は今後も重要になってくる。

植民地支配時代から続く南北構造の上にグローバル経済の負の側面を常に引き受けてきたのは途上国側である。途上国・新興国で現場の開発支援を行ったり、途上国の貧困問題をなくす取り組みやSDGs達成に向けた活動をする組織などは日本にも数多くある。途上国の財政状況の中でも、とりわけ大きな負担となっている債務問題について、人々の暮らしや生業への影響という視点から見ることで、グローバルな経済構造の課題も見えてくるだろう。特に、国際協力という文脈で考えた場合、例えば先述のJICAによる債務管理に関する支援も有効だろう。また開発の現場で活動するNGOは、債務返済に苦心するその国の政府の財政状況が、人々の暮らしにどのように影響しているのかを知りえることもあるだろう。こうした実態を発信することで、より多くの人たちが債務問題に関心を持つこともできる。持続可能な開発のための資金確保という文脈で、一人でも多くの市民が債務問題に関心を持ち、政府や国際機関へ働きかけをする力を強化していきたい。

脚注

  1. 1)本稿では、途上国の中でも特にG20に参加する中国やインド等を中心に、高い経済成長を遂げている国々を「新興国」と呼ぶ。

  1. 2)国際通貨基金(IMF)日本語ウェブサイト「重債務貧困国(HIPC)に対する債務救済イニシアティブ)  https://www.imf.org/ja/About/Factsheets/Sheets/2023/Debt-relief-under-the-heavily-indebted-poor-countries-initiative-HIPC (2023年11月23日閲覧)

  1. 3)外務省ウェブサイト「G7首脳声明」(仮訳)  https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/cologne99/g8s_sei.html (2023年11月23日閲覧)

  1. 4)IMF「グローバル債務データベース」  https://www.imf.org/external/datamapper/datasets/GDD (2023年11月23日閲覧)

  1. 5)低所得国が抱える公的債務の支払いを一時的に猶予する措置。DSSIは2年弱実施され2021年末に終了した。

  1. 6)DSSI後の債務措置に係る共通枠組(仮訳)(2020年11月13日)  https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/g20/g20_201113_2.pdf (2023年11月23日閲覧)

  1. 7)G7広島首脳コミュニケ(2023年5月20日)仮訳  https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100507033.pdf (2023年10月30日閲覧)

  1. 8)国債、政府機関債など、中央政府により発行・保証された債券のこと。一般的にはOECD加盟国など格付けの高い国の国債等を指すことが多く、安全性の高いとされるが、発行体などにより信用リスクの大きさは異なる。

  1. 9)“‘Drop the debt!’ — Protestors slam BlackRock for predatory loans to Zambia” https://www.liberationnews.org/drop-the-debt-protestors-slam-blackrock-for-predatory-loans-to-zambia/ (2023年11月20日閲覧)

  1. 10)“UN experts concerned over delay in Zambia’s debt restructuring” https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/04/un-experts-concerned-over-delay-zambias-debt-restructuring (2023年11月20日閲覧)

  1. 11)African Forum and Network on Debt and Development(AFRODAD) https://afrodad.org/ (2023年11月20日閲覧)

  1. 12)Debt Justice https://debtjustice.org.uk/ (2023年11月20日閲覧)

  1. 13)Jubilee USA https://www.jubileeusa.org/ (2023年11月20日閲覧)

  1. 14)Asian Peoples' Movement on Debt and Development(APMDD) https://apmdd.org (2023年11月20日閲覧)

  1. 15)G7 市民社会コアリション 2023「Civil7 政策提言書2023」 https://civil7.org/wpC7/wp-content/uploads/2023/04/C7_communique_JPN.pdf (2023年11月20日閲覧)

  1. 16)IMFの融資には上乗せ金利(サーチャージ)が課されるが、これが債務の借り手国側の大きな負担になっている。近年、債務再編を求める交渉の中でも途上国側からは上乗せ金利の見直しを求める声がある。

  1. 17)“New York Legislation Resolves Developing Country Debt Crises and Protects US Taxpayers” https://www.jubileeusa.org/pr_ny_debt_bill_fahy (2023年11月20日閲覧)

  1. 18)“THE NEW YORK TAXPAYER & INTERNATIONAL DEBT CRISES PROTECTION ACT” https://assets.nationbuilder.com/jubileeusa/pages/1518/attachments/original/1678908754/English_-_NY_Legislaiton_Information.pdf?1678908754 (2023年11月20日閲覧)

  1. 19)JICA緒方貞子平和開発研究所によるナレッジフォーラム「複合リスク下における途上国の債務問題」(2023年2月8日)での報告「途上国における公共財政管理の課題、JICAの取り組み~公的債務管理を中心に~」(坂野太一氏)

引用文献
 
© 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
feedback
Top