東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O003
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股関節伸展制限が障害物跨ぎ動作に与える影響1
~関節角度とToe Clearance~
*斎藤 良太早川 友章金井 章小栗 孝彦小林 篤史種田 裕也吉倉 孝則
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抄録

【目的】大高らによると,本邦における要介護状態に陥る原因は,脳血管障害(27.7%),高齢による衰弱(16.1%),転倒・骨折(11.8%)であり,転倒・骨折の予防は重要な課題である.また転倒発生に関与する要因には,身体機能に関係する内的要因と環境など外部の条件に関連する外的要因がある.南角は,高齢者の身体機能低下による動作の特徴として歩行時の股関節伸展角度の減少を報告している.しかし、転倒の外的要因である敷居などの障害物を跨ぐ動作に対する股関節伸展角度減少の影響については十分に検討されていない.本研究の目的は,股関節伸展角度の制限が障害物跨ぎ動作に与える影響について検討することである.
【方法】同意の得られた健常な青年男性8名(平均年齢21±1歳)を対象とし,我々の作成した股関節伸展制限装具を着用させた.その後,立位における股関節屈曲伸展の自動運動可動域の計測を行った後,裸足にて10m歩行路を歩行させ,歩行路の中央付近に設置した発砲スチロール製の障害物跨ぎ動作を計測した. 平地歩行時(平地歩行),2cmの障害物跨ぎ時(2cm跨ぎ),8cmの障害物跨ぎ時(8cm跨ぎ)の3種類の動作課題について,制限時と非制限時で各3回計測し比較した.計測には三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製)を用い,関節角度・Toe Clearance(TC)を算出した.
【結果】立位での股関節屈曲伸展可動域は,伸展が非制限時4.7°から制限時 -11.9°と有意に減少したが,屈曲には有意な差は認められなかった.跨ぎ動作では,各動作課題において非制限時と比較し制限時では障害物を跨ぐ際の立脚側股関節伸展角度が有意に減少し,膝関節屈曲角度が有意に増加したが,遊脚側では股関節屈曲角度が有意に増加した.また制限時には,骨盤前傾角度が有意に増加した.一方,平地歩行に比べ,2cm跨ぎ,8cm跨ぎでは,遊脚側で制限時・非制限時の両条件ともに障害物の高さが高くなるに連れて障害物を跨ぐ際の股関節屈曲角度・膝関節屈曲角度が有意に増加した.TCは,制限時と非制限時の間に有意な差は認められなかった.しかし,平地歩行と比較し,2cm跨ぎ・8cm跨ぎでTCは有意に増加していた.
【考察】障害物の高さが高くなるに連れて遊脚側股関節屈曲・膝関節屈曲角度を増加させることで,TCを保つことが確認された.これは,股関節伸展制限(股関節屈曲拘縮)が生じると立位姿勢を保持するため骨盤の前傾角度,立脚側膝関節の屈曲角度が増加する.そのため,障害物を跨ぐ際に必要となる足部挙上を遊脚側股関節・膝関節の屈曲増加により代償したと考えられた.
【まとめ】健常青年では,一時的な股関節伸展制限に対し骨盤前傾,遊脚側股関節屈曲,立脚側膝関節屈曲で代償することで,障害物跨ぎ動作に適応する能力を有することが確認された.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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