東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O008
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Functional reach test動作の運動力学的解析
*小林 敦郎渡邊 大輔三谷 保弘谷 浩明
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抄録

【目的】Functional reach test(以下FRT)は動的なバランス能力を測定する方法であり,簡便で定量的な計測が可能なことからも,バランス評価や転倒予測の指標として広く受け入れられている.ただ,このFRT距離が,実際の姿勢制御とどのように結びついているかについては,いまだ明らかではない.そこで本研究では,FRTにおけるリーチ動作の運動学的変数,運動力学的変数を測定し,その動作の特徴を抽出すること.またその他の身体機能がこの動作にどのように寄与しているかを明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は,健常成人9名,(男性5名,女性4名)平均年齢25.4±3.9歳であった.計測には,三次元動作解析装置(VICON-MX)と床反力計(AMTI社製)を使用し,運動課題は1.最大限前方に体重移動する動作,2.最大限後方に体重移動する動作,3.10cmのFRT,4.20cmのFRT,5.30cmのFRT,6.最大のFRTの動作とした.課題遂行の順序はランダムとし,1試行ずつ行った.測定項目としては,体幹・下肢の関節角度,関節モーメント,床反力,足圧中心,身体重心の他,最大FRT距離,体幹屈曲伸展筋力,足趾把持筋力,座位体前屈距離を選択した.Viconによる足,膝関節の関節角度は静止立位を基準とした0度補正を行なった.運動学的,運動力学的変数は,各動作の静止位置での5秒の中の安定した1秒間をデータとし平均値を求めた.関節角度および関節モーメントへのFRT距離の影響をみるため,FRT距離を要因とする一元配置分散分析を行った.また,FRT距離の条件ごとで,股関節屈曲角度と足関節底屈角度間の相関分析を行った.
【結果】最大FRT距離の平均値は39.0±4.2cmであった.分散分析の結果,全ての条件で距離の違いによる主効果を認めた.相関分析の結果, 最大FRT距離と10cmFRTの体幹屈曲角度の間には有意な相関が認められた(r=0.701,p<0.05)が,最大FRT距離と最大体幹屈曲角度の間には有意な相関は認められなかった.各FRT距離での股関節屈曲角度と足関節底屈角度の角度間の相関は,短い距離では相関係数が高い傾向が認められたが,距離が伸びるにつれて相関係数が低くなる傾向が認められた.
【考察】各体幹屈曲角度と最大FRT距離の関係から,FRT距離の大きいものほど短いFRT距離の間は,体幹をそれほど使わずに足関節を中心とした姿勢制御でFRT動作が可能であると考えられる.逆にFRT距離が小さいものは,最初から体幹を利用し股関節を中心とした姿勢制御でFRT動作を行っているものと考えられる.さらに,股関節と足関節の関係からFRT距離が短い間は,股関節屈曲と足関節底屈が相互作用しながら協調して動作を遂行しているが,最大FRT距離に近づくにつれてこの協調による制御とは別の要因があることが示唆された.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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