東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O043
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地域在住高齢者の健康関連QOLに関連する因子の検討
*川村 皓生加藤 智香子和田 美奈子若山 浩子
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抄録

【背景】近年、我が国では急速な高齢化により高齢者の健康で自立した生活の期間の延長、いわゆるquality of life(QOL)の維持・向上が重要になっている。中でも医療の分野では特に身体的・精神的・社会的側面に着目した健康関連QOL(以下HQOL)が注目されている。しかしHQOLがどのような因子に影響されているか、多方面の因子に着目して調査した研究は少ない。
【目的】地域在住高齢者においてHQOLの関連因子を調べ、その影響の強さを検討することを目的とした。
【方法】地域の健康教室や転倒予防教室などに通う高齢者のうち、70~89歳の女性でMMSE(Mini-Mental State Examination)21点以上の認知機能を有する32名(平均年齢75.0±4.3歳)を対象とした。HQOLの評価指標にはSF-8(The MOS Short-Form 8-Item Health Survey)を用い、その上位尺度である身体的サマリースコア(以下PCS)と精神的サマリースコア(以下MCS)の2つをHQOLの指標とした。今回HQOLとの関連を調査した因子は、一般情報(年齢、BMI、疾患数、家族構成、過去の職業の有無)、過去一年以内の転倒経験の有無、転倒不安(Falls Efficacy Scale;FES)、歩行能力(10m最大歩行速度)、社会的交流(5項目の質問紙)、抑うつ(Geriatric Depression Scale;GDS)で、これらの因子と、PCS・MCSとの相関をSpearmanの順位相関係数及びMann-Whitney testによって調査した。さらに相関の見られた因子を説明変数として重回帰分析(ステップワイズ法)に投入し、その影響の強さを検討した。
【結果】PCSと相関がみられた因子は疾患数、歩行能力、転倒不安、抑うつであった。次に重回帰分析によって影響の強さを検討すると、PCSと最も関連が強かったのは抑うつ(β=-0.47、p=0.00)で、次に転倒不安(β=-0.33、p=0.04)であった。MCSと相関がみられた因子は過去の職業の有無、転倒不安、社会的交流(友達の有無・趣味の有無)、抑うつで、そのうち最も関連が強かったのは転倒不安(β=-0.45、p=0.01)であり、次に抑うつ(β=-0.35、p=0.03)であった。
【考察】疾患や歩行能力といった身体機能の低下はPCSに直接影響を及ぼしていると考えられるが、それに加え転倒不安や抑うつといった心の問題が自身の身体機能を過小評価している可能性が有ると考えられた。MCSの関連因子にも似た傾向が見られたことから、心の問題が高齢者のHQOLに強く影響を及ぼしていると推察された。
【結論】地域在住女性高齢者のHQOLには身体機能よりも、転倒不安や抑うつといった心の問題が強く影響していることが示唆された。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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