東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O045
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脳卒中片麻痺患者の排泄動作とバランス能力の検討
―自立群と非自立群を比較して―
*松森 大起田村 千尋岩田 研二太田 良亮木村 圭佑櫻井 宏明
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抄録

【目的】
 排泄は人間の尊厳に関わる動作であり,排泄動作の自立は,退院先を決定する上でも重要である.脳卒中片麻痺患者の排泄動作は,立位にて片手でズボンの着脱を行うため,高度なバランス能力を要求される.そこで今回,Berg Balance Scale(以下BBS)を中心に排泄動作との関係を検討した.
【対象】
 対象は本研究の説明を十分行い,参加の同意を得た脳卒中片麻痺患者21名で,下肢Br.stageは3以上,麻痺側上肢は補助手以下とし,立位にて片手のみで着衣を上げる動作を行なう者に限定した.
 本研究では,排泄動作の中で一番難易度の高い,「着衣を上げる動作」に着目し,ズボンを膝蓋骨上縁まで下げた状態からヤコビー線まで上げる動作を遂行することにより分類した.自立群は当院のデイケアを利用中の12名(平均年齢71.3±5.0歳),非自立群は当院の回復期病棟で入院中の9名(平均年齢75.8±10.7歳)となった.
【方法】
 自立・非自立群を(1)BBS総合点(56点満点),(2)静的バランス得点(12点満点),(3)動的バランス得点(44点満点)の3群で比較した.今回BBSは姿勢バランス機能を大別し,支持基底面内で静止肢位を保持するものを静的バランス項目,静止肢位から随意運動へ移行するものを動的バランス項目とした.
【結果】
 各検査項目の満点を100分率化し,満点を100%とすると,自立群は(1)86.9%(48.7±4.4点),(2)100%(12点),(3)83.3%(36.7±4.4点),非自立群は(1)58.5%(32.8±5.7点),(2)88.9%(10.7±0.9点),(3)50.3%(22.1±5.2点)であった.特に,BBS各項目の中で,動的バランスである「移乗,前方リーチ,物を拾う,後方をみる,方向転換,ステップ,タンデム立位,片脚立位」の8項目については,自立群と非自立群において有意差を認めた.
【考察およびまとめ】
 着衣を上げる動作には,立位での体幹の屈曲と回旋の複合的な動作が要求される.今回,特にBBS項目の中で有意差が認められた8項目は全て動的バランスであり,前後方向への重心移動が重要であると考えられた.そのため着衣を上げる動作は,静止姿勢保持から随意運動に移行する動的バランスを必要とし,前後方向の重心移動が関与していると考えられた.
 今後,BBSの評価項目では不足している質的な評価,例えば,トイレ動作の一部であるズボンの持ち替え回数,引き上げ時間を経時的変化の中で観察していきたい.また、訓練内容の検討,患者個人に合わせた環境設定の必要性を感じた.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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