東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P047
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感覚入力の操作により歩容が改善した一症例
*中西 俊一岩田 康弘伊藤 武久佐藤 友紀飯田 有輝
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キーワード: 疼痛, 感覚入力, 歩容改善
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抄録
【目的】
人工股関節全置換術(THR)は除痛,ADLの拡大を目的に施行される.術後はアライメントが改善されることで,筋出力が変化し,歩容の改善に難渋することがある.本症例は術侵襲による疼痛は改善されたが,歩行時に荷重時痛を訴えていた.痛みには直接的な痛みだけでなく,痛みの経験や記憶などの心理的要因も関係しているとの報告もあり,今回運動イメージに着目し,理学療法を施行し良好な結果を得たので報告する.
【症例】
82歳女性.平成17年頃より右変形性股関節症と診断され,平成20年4月22日除痛目的の手術を希望され入院し,術前より理学療法を開始.4月25日THRを施行した.
【治療経過】
術前評価時はROM股関節屈曲105°外転10°で痛みによる制限であった.ADLは一本杖歩行にてほぼ自立していたが強い痛みを伴っていた.JOAスコアは右で100点中54点であった.術後14日目の評価では股関節屈曲100°外転35°.JOAスコア62点.歩行は一本杖で自立していたが,荷重時痛の訴えがあった.しかし,炎症所見,術部の伸張痛,収縮時痛,圧痛等の検査時の疼痛は認められなかった.それにもかかわらず荷重に対する不安や恐怖心は術前から継続していた.これらより,この疼痛は末梢受容器からの侵害刺激ではなく,運動の予測と実際の荷重時の感覚入力との不整合が原因と推察され,荷重感覚を再構築するために,感覚入力と実際の動作の統合が必要と考えた.訓練では立位にて立脚期における足底感覚と荷重動作の統合を試みた.荷重動作を段階的に行い,荷重感覚と痛みについて本人に確認しながら行った.痛みの評価についてはVisual analog scale(VAS)を用いて行った.その結果,介入前の歩行時はVASにて5であったが,介入後VASは0となり,痛みは軽減され歩行は一本杖自立となった.歩行に対しての発言も「痛みが出そうで不安を感じる.」から「歩けそうな気がする.」に変化した.また,JOAスコアは72点に改善された.
【考察】
今回,痛みの経験や記憶などの心理的要因が運動イメージを歪め,痛みを発生させていたのではないかと考えた.そこで訓練を通じて,立脚期に必要とされる適正な感覚入力と運動の予測の整合性がつけられるようになったため,痛みが軽減し,歩容が改善したと考えた.
JOAスコアが2週間で54点から62点に改善していた.それは,手術により痛みと関節可動域が改善したことによるものであると考えられる.その後,運動イメージに着目しアプローチした結果,JOAは72点に改善し,荷重感覚を再構築できたと考えられた.
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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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