東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P065
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超音波診断装置を使用した長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の動的観察
*大津 顕司森川 美紀磯田 真理中西 義治有川 功
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抄録

【はじめに】山田らは第35回日本理学療法士学会で長母指外転筋腱腱鞘炎及び短母指伸筋腱腱鞘炎に対するテープ療法を主とする整形理学療法を報告した。その中でテープを使用して母指を尺側回旋方向や橈側回旋方向に誘導することも臨床で有効であったと報告した。我々はテープ療法と合わせて超音波診断装置による第1背側区画の観察を行い、長母指外転筋腱(以下、APLと略す)と短母指伸筋腱(以下、EPBと略す)の動きを観察、APL・EPBの回旋を認めた。そこで我々は、母指対立機能とAPL・EPBの回旋の関係を検討するため健常人を対象に超音波診断装置によるAPL・EPBの動的観察を試みた。
【方法】対象は当院の職員19名(男性5名、女性14名)19手(全て右手)であった。超音波診断装置はアロカ社製SSD-650CLを使用し、測定部位は橈骨茎状突起部とした。測定肢位は前腕中間位、手関節掌屈背屈0°橈屈尺屈0°位、自動対立運動(母指と示指、中指、環指、小指間の4通りの指尖つまみ)を行い、短軸像でAPLとEPBの回旋の有無・方向(掌側回旋、背側回旋)・量(0~3段階)を評価した。aテープ未貼付、b母指を尺側回旋方向に誘導するテープを貼付、c母指を橈側回旋方向に誘導するテープを貼付の3通りを測定した。
【結果】回旋の有無・方向は、aテープ未貼付の場合、APLが掌側回旋したのは5名、背側回旋5名、回旋しなかったのは9名であった。EPBが掌側回旋したのは12名、背側回旋0名、回旋しなかったのは7名であった。b尺側回旋方向に誘導するテープ貼付の場合、APLが掌側回旋したのは6名、背側回旋5名、回旋しなかったのは8名であった。EPBが掌側回旋したのは15名、背側回旋0名、回旋しなかったのは4名であった。c橈側回旋方向に誘導するテープ貼付の場合、APLが掌側回旋したのは6名、背側回旋7名、回旋しなかったのは6名であった。EPBが掌側回旋したのは17名、背側回旋0名、回旋しなかったのは2名であった。APLとEPBの回旋方向の組み合わせは4通り(APL掌側回旋・EPB掌側回旋7名、APL背側回旋・EPB掌側回旋、APL回旋なし・EPB掌側回旋3名、APL回旋なし・EPB回旋なし)に絞られた。回旋した量は全19名が、示指との対立で一番少なく、中指、環指の順に増加し、小指で一番多くなった。テープを貼付した前後での回旋量の変化は、尺側回旋方向に誘導するテープ貼付の場合では減少するものの方が、橈側回旋方向に誘導するテープ貼付の場合では増加するものの方が多かった。
【考察】母指対立機能とAPL・EPBの回旋機能は系統発生学的視点で密接な関係があると考えられた。先祖帰り化(母指の尺側回旋)はAPL・EPBの回旋量の減少、ヒト化(母指の橈側回旋)はAPL・EPBの回旋量の増加に関与していることが示唆された。
【結語】母指対立時のAPL・EPBの回旋の有無・方向・量に個人差はあるものの一定の傾向が認められた。テープによる母指の回旋誘導がAPL・EPBの回旋にまで関与していることが認められた。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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