東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-04
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自転車競技における両側膝内障に対する足底挿板療法の効果 ―足底挿板療法に より疼痛が改善した1症例―
*榎木 優太清水 新悟山崎 正俊前田 健博花村 浩克工藤 慎太郎
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抄録

【目的】 臨床現場において足底挿板療法は様々なスポーツ競技者に適応があることが報告されている。しかし、自転車競技における足底挿板療法についての報告は散見されないのが現状である。今回、我々は自転車競技をしている1症例に対して足底挿板療法を行い、競技復帰し、良好な結果を得たので報告する。
【方法】 症例:27歳、男性、身長176㎝、体重74.1㎏。診断名:両側膝内障。現病歴:平成23年に自転車の競技大会に出場したが、40分間走行したところで両膝後面の疼痛により途中リタイヤをした。初診時評価:関節可動域は、膝関節に制限を認めず、膝伸展位での足関節背屈は、右5°、左10°であった。Q-angleが右15°、左12°、アーチ高率(舟状骨高÷足長×100)が右14.3%、左13.3%、開張率(足幅÷足長×100)が右40.8%、左40.3%であった。両側の縫工筋と半腱様筋に伸張痛が出現した。エルゴメーターでの自転車走行動作を観察するとKnee outからKnee inによる踏み込み動作が見られた。この踏み込み時に両膝関節の内側に疼痛が出現した。足底挿板の有無による最大脚力と疼痛の変化をStrengthErgo(三菱社製)にて評価した。疼痛の評価方法としてNumerical Rating Scale(NRS)を用いた。測定回数は足底挿板未装着と装着を交互に2回実施した。足底挿板のパットは内側縦アーチの前方部と横アーチの中足骨頭部に装着した。
【説明と同意】 本報告を行う主旨を対象者に口頭にて十分に説明し、同意を得た。
【結果】 StrengthErgoより得られた出力(最大脚力)とNRSの数値の平均を示す。足底挿板装着前が右下肢158.1Nm(以下単位省略)、NRS:3、左下肢167.1, NRS:2、装着後が右下肢171.5, NRS:0、左下肢175.2, NRS:0と改善した。3ヶ月後は装着前が右下肢179.6, NRS:0、左下肢177.9, NRS:0、装着後が右下肢190.7, NRS:0、左下肢189.3, NRS:0となり、装着前においても症状の改善がみられた。エルゴメーターでの自転車走行動作を観察するとKnee in傾向は改善されていた。平成24年5月中旬に開催された3時間の耐久レース(総走行距離122㎞)では疼痛が出現することなく完走することができた。
【考察】 今回作成した足底挿板装着により出力の向上と疼痛の改善が即時みられた。これは膝関節内側部にかかるメカニカルストレスが減少し、自転車の踏み込み動作を行っても疼痛が出現しなかったと考える。自転車と足底部の接地面はペダル上のみであり、通常の足底挿板とは条件が異なっている。そこで我々はペダルに載る前足部に着目し、パットを装着した。これにより前足部の剛性が高まり、荷重応力が効率的に伝達することで出力の向上と各関節にかかるストレスが軽減すると考えられる。課題点としては、評価で用いたStrength Ergoやエルゴメーターは競技用自転車と姿勢が異なり、動作の再現性の問題点があげられた。
【まとめ】 今回、本症例に対して実施した足底挿板にて疼痛が減少したことから、臨床の現場において問題と考えられる筋群へのストレッチのみならず、前足部に着目した足底挿板療法を併せて実施することで疼痛緩和を促進されることが示唆された。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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