東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-13
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人工膝関節置換術後症例における 膝関節伸展可動域測定の正確性 ―単純X線画像との比較―
*松浦 佑樹久保田 雅史西前 亮基谷口 亜利沙岩本 祥太由井 和男高本 伸一
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抄録

【はじめに】 人工膝関節置換術(TKA)後の膝関節屈曲拘縮は歩行能力を低下させ、特にエネルギー効率の低下や膝関節伸展モーメントの増大に伴う膝関節前面部痛の出現に関与すると報告されている。さらに屈曲拘縮はインプラントの耐久性を低下させる可能性もあることから、人工膝関節置換術後の膝関節伸展可動域を詳細かつ正確に評価し、治療に反映させることは非常に重要である。しかし、日本リハビリテーション医学会及び日本整形外科学会が定めている「関節可動域表示ならびに測定法」における膝関節可動域の測定は、軸心の記述がなく、基本軸・移動軸の設定に関しては大腿骨・腓骨のみの記述となっている。秋葉ら(1996)、隈元ら(2010)は膝関節伸展角度の測定の再現性について報告しているが、実際の大腿骨と脛骨からなる膝関節角度をどの程度正確に測定できているかは明らかにされていない。本研究ではTKA術後症例において、理学療法士が測定する膝関節伸展可動域と単純X線画像から測定できる可動域との関連性を調査することを目的とした。
【対象・方法】 変形性膝関節症によりTKAを施行した21例22膝、男性3例、女性18例、平均年齢75.7±5.1歳を対象とした。術後平均Follow-up期間は13.4±21.5か月であった。全ての対象者に対して本研究の説明を行い、同意を得た。膝関節伸展可動域の測定は「関節可動域表示ならびに測定法」に準じ、背臥位にて股関節内外旋中間位、踵の下に台を置き、下肢の自重のみで最終伸展位となった角度をゴニオメーターを用いて測定した。全症例の関節可動域は同一理学療法士が測定した。一方、単純X線撮影は放射線技師がゴニオメーター測定と同一の姿勢で膝関節側面像を撮影した。関節可動域測定を実施した検者とは異なる検者が単純X線画像から大腿骨軸と脛骨軸からなる膝関節伸展角度を画像ソフト上で測定した。ゴニオメーターを用いて測定した膝関節伸展可動域と単純X線画像にて測定した膝関節伸展角可動域との関係はPearsonの相関係数を用いて解析した。
【結果】 ゴニオメーターを用いて測定した膝関節伸展可動域の平均値-5.3±3.7°、単純X線側面像から測定した膝関節伸展可動域の平均値は-2.2±6.4°であった。また、ゴニオメーターを用いて測定した膝関節伸展可動域は単純X線側面像から測定した膝関節伸展可動域と有意な相関関係が見られたものの、各測定方法間で5°以上の差が生じていたのは7膝であった。
【考察】 TKA後の膝関節伸展可動域においてゴニオメーターを用いて測定した値は単純X線側面像から測定した値より低下して計測する傾向にあり、測定誤差は測定方法の違いや軟部組織の影響などが考えられた。
【まとめ】 理学療法士が測定する膝関節伸展可動域とX線側面像から測定する膝関節伸展可動域との関連性を調査した。各測定間において有意な相関関係がみられたものの、測定誤差が大きくみられた症例が存在した。その要因として、測定方法の違いや軟部組織の影響が考えられた。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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