東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-16
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ADL全介助者に対する介護負担要因を 明らかにする為の質問紙作成の試み ―移乗介助に着目して―
*壹岐 英正片山 裕介森下 愛子桒原 里奈片山 脩澤 俊二
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キーワード: 介護負担, 寝たきり, 移乗
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抄録

【はじめに】 リハビリテーションの効果判定として日常生活動作(以下ADL)評価法が使用されているが、これらは介助量によって評価される。「自立」や「部分介助」は介助量などで詳細に変化を評価できるが、「全介助」を詳細に評価する評価法は少ない。そこで我々はADL全介助者の変化を詳細に評価できる評価法が必要と考えた。ADL全介助者の効果判定には介護負担感評価が妥当と考えるが、ADL全介助者の介護負担感は十分に明らかにされていない。
 今回の目的はADL全介助者に対する評価法を作成する為の予備研究として移乗介助に着目し、介護負担となる要因を明らかにする為の妥当性のある質問紙を作成することである。
【方法】 第一段階として質問項目案を作成した。質問項目は介護負担となる要因を理学療法士(以下PT)2名、作業療法士(以下OT)3名が、KJ法に準拠してカテゴリー分類し作成した。
 第二段階として、質問項目案の妥当性を質問紙調査にて確認した。対象は病院、介護老人保健施設、介護老人福祉施設に勤務する介護職員12名、PT16名、OT7名の計35名とした。研究の目的と方法を書面と口頭で説明し同意を得た。
 質問項目に対し負担感を10㎝のVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて回答を得た。PTおよびOTには介護者の負担を想定し回答を求めた。項目の妥当性は除外基準を「全項目のVAS平均値から2標準偏差を減した値より小さい項目」として検討した。また質問項目案以外の項目を抽出するため自由記載欄を設け、得られた項目をKJ法にて再分類し質問紙を作成した。
【結果】 第一段階ではICFに基づき健康状態、心身機能と構造、および環境因子3領域に分類した。健康状態は(1)体格(2)皮膚の状態(3)嘔吐(4)感染症(5)禁忌肢位(6)介助中の吸痰が挙げられた。心身機能と構造は(1)肩関節拘縮(2)低緊張(3)高緊張(4)股屈曲拘縮(5)股伸展拘縮(6)膝屈曲拘縮(7)膝伸展拘縮(8)尖足(9)動作時痛(10)介護拒否(11)暴言や暴力(12)不定愁訴(13)体動(14)介助中の流涎(15)意識レベルが挙げられた。環境因子は(1)車椅子調整困難(2)ベッド調整困難(3)床上介助(4)排泄ルート(5)点滴、酸素療法(6)家族の監視(7)移乗回数(8)2人介助(9)人出不足が挙げられた。
 第二段階ではVASの全項目平均が6.1±0.7㎝、最低値を示した項目の平均値は3.6±1.8㎝であり、除外基準である1.3㎝に該当する項目はなかった。また自由記載欄に13回答を得た。KJ法による再分類の結果、「車いす部品の取り外し」「座面の低さ」「移乗範囲狭小」の3項目を追加し、新たな質問紙を作成した。
【考察】 作成した質問項目案は、除外基準に該当しなかった。移乗動作はPT, OTが行う業務として頻度が多いことから介護負担感を想定できたと考える。
 また自由記載欄を基に質問項目を3項目追加した。「車いす部品の取り外し」や「座面の低さ」についてはPTの意見であり、第1段階の補足を得ることが出来た。また「移乗範囲狭小」については介護職員からの意見であり、業務内容の違いから得られた項目である。
【まとめ】 今回は移乗介助時の介護負担要因を明らかにする為の妥当性のある質問紙が作成できた。今後は多くの介護職に調査を行い、ADL全介助者に対する評価法の作成につなげていきたい。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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