抄録
【目的】 体幹側屈筋力の測定は腹筋群と脊柱起立筋群のどちらの筋力も評価でき、左右差を比較できる利点があるため臨床上有用だと考える。しかし、徒手筋力計(以下、HHD)を用いた体幹側屈筋力の測定についての報告は少なく測定方法は定まっていない。我々はHHDを用いて壁を使った比較的簡便な体幹側屈筋力の測定方法を考案した。そこで本研究の目的は健常人を対象に測定方法の再現性を確認し、臨床応用が可能であるかを検討することとした。
【方法】 対象は四肢または体幹に整形外科的異常を認めない健常人16名(男性8名、女性8名、平均年齢25.4±3.7歳)とした。全員に研究の内容を十分に説明し書面にて協力の同意を得た。
体幹側屈筋力の測定は壁ぎわに設置した治療台にて行い、測定肢位は両上肢を胸部の前で組んだ足底非接地の端座位とした。座る位置は下腿後面と座面前縁が2横指離れ、被験者のすぐ側方が壁となるよう調節し、大腿近位部と遠位部をそれぞれベルトで固定した。HHDはμ-Tas F-1(アニマ社製)を用い、センサーを壁と上腕外側部(肩峰直下)との間に入れ壁に固定した。事前に十分な説明と練習を行ったのち、体幹正中位から壁の方向へ等尺性体幹側屈運動を5秒間行わせ最大筋力を測定した。片側5回-反対側5回の順で測定し、最大値を左右それぞれの代表値とした。なお、疲労の影響を考慮して測定順序は無作為とし、すべての測定間隔は30秒以上空けた(測定1)。また、日の違いによる検者内の再現性を検討するため3日以後(4~7日)に同一方法にて再度測定を行った(測定2)。
統計学的分析は検者内の再現性については級内相関係数(以下、ICC)を用い、Bland-Altman分析にて固定誤差と比例誤差がないことを確認したのち、最小可検変化量の95%信頼区間(以下、MDC95)を求めた。測定1と2の学習効果の有無と筋力の左右差については対応のあるt検定を用いて比較した。統計解析ソフトはR2.8.1を使用し、有意水準は5%未満とした。
【結果】 体幹側屈筋力の平均値は測定1が右147.3±72.4N、左155.6±79.2N、測定2が右151.5±80.7N、左157.6±86.6Nであった。ICC(95%信頼区間の下限値-上限値)は右が0.972(0.925-0.990)、左が0.973(0.928-0.990)でいずれも強い相関が認められた。測定1と2に有意な固定誤差と比例誤差は認められず、MDC95は右35.2N、左38.2Nであった。測定1と2に有意差は認められず学習効果の影響は見られなかった。左-右および利き手方向-非利き手方向への筋力に有意差は認められなかった。
【考察】 ICCで強い相関が認められたことから、今回の測定方法は再現性の高いものであったと考えられる。HHDとベルトがあれば比較的簡便に測定でき、臨床応用が可能な方法だと考えられる。MDC95が右35.2N、左38.2Nであったことから、同年代の健常人においてはそれ以下の変化は測定誤差である可能性が高いことが示唆された。
【まとめ】 今後は疾患を有する患者を対象に再現性と妥当性を検討していく必要があると考える。