抄録
【目的】 頚部関節位置覚は姿勢制御に重要な役割を果たしていることが報告されている。しかし頚部関節位置覚と姿勢安定性の関連性は明らかでなく、また健常人における頚部固有感覚トレーニングの姿勢安定性への効果は示されていない。そこで本研究において、健常若年者における頚部関節位置覚と重心動揺の関連性および頚部固有感覚トレーニングの重心動揺への影響について検討を行った。
【方法】 対象は本研究の趣旨を説明し同意が得られた健常若年者33名(男性16名、女性17名、平均年齢20.1±1.6歳)である。被験者を無作為に頚部固有感覚トレーニング群とSham群に振り分け、10日間のトレーニングを行い、その前後で頚部関節位置覚および重心動揺の測定を行った。頚部関節位置覚の測定はRevelらが先行研究で用いているRelocation Testを使用した。測定時に被験者の後方にビデオカメラを設置し、取り込んだ動画からForm Finder(インク社製)を使用して角度の解析を行った。頚部関節位置覚の測定は左右回旋それぞれ10回行い平均値を算出した。重心動揺の測定はNeurocom社製EquiTest®を使用し、Sensory Organazation Test(以下SOT)にて行った。重心動揺の指標としては足圧中心の総軌跡長を算出し、測定中に転倒した者は解析から除外した。頚部固有感覚トレーニングは、Relocation Testと同様の方法で行い、トレーニング群には毎回視覚的フィードバックを与え、Sham群には与えなかった。統計解析はSPSSを用いて、Relocation Testと重心動揺の相関についてはスペアマン順位相関係数検定を使用し、トレーニング前後のRelocation Testおよび重心動揺の比較には対応のあるt検定を使用し、有意水準は5%とした。
【結果】 SOTのすべての条件においてRelocation Testとの相関関係は認められなかった。トレーニング前後の比較では頚部固有感覚トレーニング群においてのみRelocation Testの誤差が6.94±2.18°から4.58±1.76°に有意に低下し、SOTのcondition6において重心動揺の総軌跡長が62・31±12.57㎝から58.18±11.39㎝に有意に低下した。
【考察】 今回、健常若年者において頚部固有感覚トレーニングにより頚部関節位置覚が改善するとともにSOTのcondition6での重心動揺が減少することが示された。SOTのcondition6は前庭感覚および頚部関節位置覚からの求心性情報が要求されると考えられる。本研究において頚部固有感覚トレーニングにより頚部関節位置覚が改善したために、その条件下における姿勢安定性が改善したと考えられる。また今回、頚部関節位置覚と重心動揺との間に相関関係は認められなかったが、姿勢安定性に関与する因子は頚部関節位置覚以外にも複数あるため、健常若年者においては他の要因の影響があったためではないかと推察される。
【まとめ】 本研究において頚部固有感覚トレーニングにより姿勢安定性が有意に改善することが示されたが、頚部関節位置覚と姿勢安定性の間に相関関係は認められなかった。