東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-12
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一般口述
静止立位姿勢の感覚統合における分析の一考察
*松田 真島田 隆明高橋 和久
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抄録

【目的】 静止立位姿勢の安定性は、支持基底面(以下、BOS)内で身体の質量中心の鉛直投影点である重心(以下、COG)を制御する能力であり、足圧中心(以下COP)により表せるといわれている。身体の位置と運動に関する情報は、視覚、体性感覚、前庭感覚の3つの感覚から中枢へ提供されるといわれている(Gurfinkel&Levick、1991;Hirschfeld、1992)。1つの感覚情報が低下すると、他の感覚情報の感受性を増加させ、静止立位姿勢を保持すると思われる。そこで今回は、外乱刺激によって各感覚情報を低下させ、感受性が増加した感覚戦略によるCOPの軌跡を分析することとした。また、各感覚によるCOP軌跡の再現性についても検討する。
【方法】 対象は健常成人男女24名(男性17人、女性7人、平均年齢21.5±4歳)とした。対象者には、本研究の趣旨を説明し、文書にて同意を得た。静止立位姿勢の評価としては、Balance Master(Nerocom社製)を使用し、静止立位姿勢を10秒間、3試行を1条件とし、合計4条件の開眼・閉眼時のCOPの計測を行った。測定条件は、(1)平地での静止立位姿勢、(2)身体動揺を伴う柔らかいフォーム上での静止立位姿勢、(3)被り物をかぶせ、視覚に外乱を加えた静止立位姿勢、(4)フォーム上で被り物を被せた静止立位姿勢とした。加えて、各条件の測定はカウンターウエイトをとり測定を行った。各条件で測定後のCOPの前後・左右方向の軌跡データと、統計学的分析として、前後・左右方向の軌跡をフーリエ変換(以下、FT)にて周波数に変換した。各被験者の各条件の軌跡データの平均と、FTに変換後の平均データに対しICCを求めた。
【考察】 各測定条件における、COPの軌跡データのICC(1.1)は低値となり、再現性は低い結果となった。これは、静止立位姿勢を保持する上で、3つの感覚を脳内で統合する必要があり、時間的な変化により評価を行うことは難しいためと思われる。しかし、FT変換後のCOPの再現性は高い値であった。これは、姿勢制御は、3つの感覚から求心性入力された情報を脳内で処理を行った後、身体部位に対して出力され、結果を求心性に入力する、フィードバックループによる制御が行われているためであると考える。フィードバックループのうち、閉ループに対する評価方法は、周波数によるCOPの軌跡解析を行うことで、より明確に比較することでき、再現性が高くなったと考える。脳内での情報処理は各個人により異なるため、出力された経時的な変化での比較は困難である。COPの軌跡解析は、周波数を主軸にした評価を用いた方が評価方法として適している可能性が示唆された。
【まとめ】 本研究では、静止立位姿勢のCOPの移動の軌跡を周波数に変換して分析した。周波数に変換したデータでは、再現性が高くなることが確認できた。今後の展望として、周波数解析を用い、各感覚器による静止立位姿勢のバランス調節の比較をしていきたいと考える。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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